声オタおにじくんの声学審問H!

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過激派で有名な(?)おにじさんが、声優の事を語ったり。

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【注意有】ANIPLEX.EXE初陣のフロントウイング・枕タッグ作『ATRI -My Dear Moments-』製品版レビュー

ちゃろ~、おにじです(激寒)

 

今回は、久々にノベルゲ感想記事。

…と言っても今回は長くならないかもなあ…って感じではありますが。(結局そこそこ長くなった)

 

今回は6月19日発売の『ATRI -My Dear Moments-』のちょっとした感想を。

この記事は本編のネタバレを含みます。本編をプレイしてからご覧ください。

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製品版でスクショ撮るの忘れてたから体験版のやつを貼るやつ

 

 

 

プレイ前所感

筆者は体験版は既にプレイして、なんとなくの設定及び概要は分かっている状態からのスタートとなる。

海面上昇によって世界が沈み行こうとしている中で、色々と諦めてしまった主人公の前に人にしか見えないロボットが現れる、ロープライス全年齢ノベルである。

 

今作は新ブランド『ANIPLEX.EXE』の初作品の一作であるが、制作メンツを見ると、

『グリザイアシリーズ』ジブリールシリーズ』等を制作したフロントウイングと、素晴らしき日々 〜不連続存在〜』(こっちは系列のケロQではあるけど)やサクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-』等を制作したが手を組んでいる今作は、特に過去のエロゲシーンを知っている人間は興奮するポイントである事は間違いない。

紺野アスタ、ゆさの、基4、松本文紀、SCA-自、わいっしゅ…

並べれば並べるほどその豪華さを感じることになる。

 

今作の設定はロボット(AI)と人…というある意味ノベルゲーに限らず様々な媒体が食い尽くしてきた設定であり、実際筆者が以前記事にした『神様のような君へ』(CUBE / 2020)も近い設定であった。

oniji.hatenablog.com

今作はそれを2000円という超ロープライスで、全年齢ノベルゲーとして作ろうとしているので、どのようなアプローチがされるのか、そこが難しそうな点であり、興味深い点である。

 

今年は割と新規参入系全年齢ノベルゲが他にもあり、『マルコと銀河竜』(TOKYO-TOON / 2020)があったわけで、こちらはほぼフルプライスでの発売だった。(なお逆おま環)

こちらともどのような差があるのかも含めて考えていきたい所。

ANIPLEX.EXEの『ノベルゲームだから、おもしろい』を体現できている作品となっているのかを見ていこう。

 


UIチェック

一応体験版でやったけどもう一回やっておくか()

.xp3のデータがあるため、エンジンは多分吉里吉里Z。

 

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初回起動時、言語設定が登場する。

対応言語は日本語、英語、中国語(簡体、繫体)となっている。

サブテキストを登場させることが出来るのは、マルコと銀河竜と同じだ。

ただ、こっちの方がそもそもの制作画面サイズが小さいので文字がかなり小さくなるのが欠点だろうか。(後述)

 

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画面表示設定。

画面オリジナルサイズは1280×720のHD画質だ。

ウインドウを自由にサイズ変更も可能で、『ウインドウ』と『フルスクリーン』の二択表示だ。

ただ、この設定は上にポインタをあててツールバーを登場させると、ここにも『画面設定』が存在し、定格の複数の解像度で表示することも可能だ。

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ここでも言語表示を変更することも可能。

『曲名表示』はデフォルトではしないに設定されている。

『ボイス再生』と『ボイス登録』のボタン表示をオン・オフも存在する。

 

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プログラム設定です。

ゲーム再生速度及び、音声再生速度の変更が可能。

ドラマチックモードを搭載してる。(これあんまり見ないよね)

台詞があるシーンでは、字幕を表示しないモードだ。

外部音声ツールと連携の機能がある。

主人公及び地の文をいわゆるゆっくり音声みたいな物で再生が出来る機能です。

ある程度覚え込ませておかないと発音を間違いまくるこの機能ですが、オートで流し見する際は割と使えなくはない機能だ。

…というかこの機能ゆずソフトとかあざらしそふとくらいでしか見たことあんまないかもね。

 

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テキスト設定。

テキスト速度はデフォルトで80に設定されており、早めになっている。

オートモードに3タイプが存在する等、詳細な設定が存在する。

テキストのフォントは固定となっており、多分源ノ角ゴシックのBoldだと思う。

マルコも、9-nine-もこのフォントである。多分。

こうやって体験版記事に書いたのが誤りだったのが書き直している理由であったり。

先程の画面設定のツールバーフォント選択項目がある。

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一番下に

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こちらでフォントの変更も可能である。デフォルトは『源ノ角ゴシックB』である。

 

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サウンド設定です。

マスターボリュームが存在。

BGMをボイス再生時に落とす機能がデフォルトでオンになっている。

ボイス再生時にクリックすると次の文が主人公又は地の文であっても停止されるボイスカット機能がデフォルトではオフに設定されている。

システムボイスは右に表示されている5名から自由に選択が可能。

割と珍しくない?と思うのが、各キャラクターのボイス音量設定のデフォルト値が、めちゃくちゃバラバラな事。

実際このバランスで良いなと思ってプレイしたけど、普通はオール100じゃないの?声の性質とかで変えてるんだろうけども、なにこれってなった(

 

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ダイアログ設定。

クイックセーブだけデフォルトで確認がオフ。

 

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タッチ設定。コイツ、タッチUIにも対応しているし、割とタブレットとかでも出来そうな雰囲気だ。

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タッチUIにすると、右側にカーソルをやったりすればこの表示が出るようになっている。

 

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ショートカットの確認です。まぁこの確認がないゲームって逆に困る。割とあるけど。

 

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セーブスロットは10×15で150スロットです。

チャプター名と日時、台詞が表示されます。

 

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プレイUIです。

概ねの機能は分かりやすく揃っている。

左の3つは上から、非表示、ボイス再再生、お気に入りボイス登録。

 

そして、このゲーム、珍しくお気に入りボイス機能が装備されている。

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スロットは10×10と正直クソ少ない。これはページ追加が欲しい所。

…だったが、結局製品版でもこちらの変更はなかった。

 

 

UIに関しては、結構ノベルゲームとしては優秀な機能が搭載されている比率が高い印象で、現在UI的な面でリードしているゆずソフト的なところも少なくない。

ただ、画質はHDだったり、細かい設定の所がなかったり、スロット数の問題など、ここまで来たら徹底して欲しいという我儘には応えてくれない感じだなとも思った。

とはいえ十分優秀。非常にありがたい仕様である事には間違いなく、ノベルゲームが初めての人にもかなり扱いやすい仕様と機能を取り揃えている印象だ。

 

 

プレイ所感

今回はあまり長々と書くつもりはない(というかゆきいろで書きすぎたんだが)のだが…

 

体験版範囲に関してだが、ざっとやった印象では複数の演出が追加されている。

SDの追加が主な変更点だろう。複数のSDが追加されており、体験版ではほぼ文字オンリーで表現されていた部分の補足が行われたと言っていい。

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その他説明的な所で画面の表示を使うシーンもところどころに存在し、いい感じになっていた。

 

体験版範囲を過ぎていくと、色々な情報が明らかとなっていくわけだが。

この作品全体に言える事だが、話の繋がり方という部分で非常に秀逸である。

登場人物が決して多いわけではない今作だが、その少ないキャラクターを上手く意味のあるものに仕立て上げてくれる所が強く、『ノベルゲーム』としての必要なポイントをしっかり押さえていてくれる。

 

また作品を通してのテーマと言う物をずっと大切にしてくれている感じはある。

この一環したテーマ性がこの作品の良さを作り出しているのかもしれない。

 

体験版範囲からずっと思っていたことだが、今作はアトリの可愛さを序盤でかなり前面に押し出している。

こういうロボットものというのは最初から感情豊か系ってそんなにイメージにない(ないとは言ってない)し、その感情がロボット的な勘定というよりはより人間的な感情であるように見えた。(まぁ正確にはヒューマノイドなんだけども)

この『アトリの感情』という部分が今作の肝なわけだが。

 

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主人公の夏生にとってアトリはどんどん必要不可欠なものになっていく。

しかし、それが『好き』とは異なるという話になっていくなかで、夏生の幼少期の初恋の人の話になっていく。

 

その中で、『初恋の人=アトリ』なのではないか?という話になっていき、ここから夏生の心持ちが変わっていく。

体験版直後からの流れは基本的には主人公の恋の行方という感じで、ある意味ロボットであることを一旦ちょっと置いておいて感もあるかもしれない。

この辺りは一種の記憶探しという所もあり、本当にそうなのか?という所に迫っていく感じが面白い。

ちょっとしたきっかけの作り方が上手いし、一枚絵の使い方が非常に上手い。

こういう所の感情の持って行かせ方とかに、スタッフの有能さを感じるポイントとして上げてもいいだろうか?

 

今作は『主人公の過去』と『アトリの過去』、そして、『AIロボットは心を持つのか?』という点に関してかなり掘り下げた…というか、そこをテーマにした作品と言える所を感じ取る事が出来る。

 

『初恋の人=アトリ』である事を示す過去の場面に関しては「やっぱそうだったのか」という所が初見時点では強いわけだが、この場面の会話がかなり後に効いてくる感じになるのが非常ににくいポイントだ。

 

アトリが少し昔のことを思い出して、晴れて恋人同士になっていく過程というのは、アトリが人の心を理解した…と思わせるに十分な演出であり、「良かったね~」と思わせるポイントではあるのだが、今作の上手い所は何気ない描写を伏線として上手く生かしている点。

 

例えば、先程の過去回想とかの『笑顔』であったりとか、『アトリはログを絶対に見せようとしない事』とか、そういう細かい所から、意味深な所までの使い方が上手い。

ロープライスであり、決して長くは書けない価格帯で、ここまで巧妙に伏線を配置できる所はマジで良い。

 

今作は『AIロボットは心を持つのか?』という点が一番深く掘り下げられたテーマであり、ここを非常に面白く、それでいてある意味現実的に描いているように思える。

この点の掘り下げはフルプライスである『神様のような君へ』を大きく上回っている。

まぁ上回った理由は、あちらは恋愛側にさっさとシフトする必要があるのに対して、全年齢ノベルゲであるATRIはここを過程に時間をかけられるという点も大きいのだろうが。

 

”そう簡単なことではない”という点もそうだし、ここからの展開で捻りを加えてくれているのが非常に『面白いノベルゲーム』っぽさを出してくれる(実際に面白いのだが)

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赤尾ひかるはもっと使われるべき声優であると改めて思った

 

なので、この辺りで一旦止めてUIでのシステム音声をアトリにしていると尽くダメージを受ける設定になってたりする。つらい。(今その明るさで言われても辛い。むしろ、9-nine-のようにこの期間はロボットっぽくするというギミックがあればより辛さが増大したかもしれないが…)

感情が演技だった…辺りの微妙な、めちゃくちゃ複雑とも言える距離感は独特であり、一概にどういう関係と言うことも出来ない感じがあります。

この関係を「なんでそうなるんだ?」と思うか、「なんかそう言う風になっちゃうよね」と思うかで、この作品への面白さの感じ方も変わってきそうな気もする。

 

この辺りから出てくる

「私には傷つく心がありません」

「”喜び”が何かを知りません」

系統のセリフは、最終盤に効いてくるポイントとなった。

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所謂『Not found』のような物ですけど(???)、「そうだよねえ」と思わせるリードが最後の展開で読み手の心を揺さぶってくれたかなあと。

ノベルゲームって上手いこと読み手を納得させて、裏切るのも一要素だと思うわけだが、今作は全体的にその方向性が上手い。ロープライスなのによくまとめている。

 

ここからこういうロボット系では”よくある記憶欠落”が始まるわけですが、ここまでの持って行き方が割といい感じだった上、この展開で忘れていくのか…という悲しさというか、虚しさの方が個人的には先行した。

というかロープライスだとこういう展開やるしかねえかなとも思った。

 

キャラが全員良い奴ってのはやってて気が楽ですよね。

終末だからこそひどく絶望している人間とかがいても、極悪人とかは現れないんだろうか?

いやまぁ、ヤスダは悪に寄ってはいるし、最初の頃の花…キャサリンはそんな感じではあったんだけど。

でも話せば分かる側だったし。

 

アトリのマスターは誰なのか?というのと、アトリは心を持ったのか?

という部分を両方一気に放出する所は素晴らしかった。

「私には傷つく心がありません」

「”喜び”が何かを知りません」

と言っていたアトリがボロボロに泣くシーンは良かった。

良かったけど、なんでこのシーンをOPにぶちこんじゃったんだろう。

ここまでず~っと『どっかでアトリは泣く』っていうのが頭に入った状態でやりたくなかったんだけど????

ログの場面はアトリのしんどさったらねえなあ…ってなるというか。

 

全てが解決しても、アトリといられる時間はわずか…というのは悲しい。

なんというか、濃密な時間をちゃんと追ってこられた感じがあった。

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「心がなければ、こんな風に思わずに済んだのに」

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「この涙はわたしが”喜び”を感じている証拠です」

等ここまでちゃんとプレイしてると重くて仕方がないセリフが最後の方に続きまくるので、なかなかハードです(褒めている)

 

しかしお別れの仕方が、エデンの制御コンピュータと一体になるとかいう方向に行くとは買ったときは思わなかったですな。

こう予想外の着地点を見つけてくれてよかったと思う。

 

アトリともう一度会うために、夏生はもう一度地球を救う為にアカデミーに向かってEND1が終わるわけですが…

 

TRUE ENDもあるの有り難いですよね。

しっかり水菜萌と結婚してて笑ったけど。一途が、良い子過ぎるわ水菜萌。

最後までアトリを追っていた夏生に、寄り添える水菜萌がド聖人だわ…

 

 

雑感

この作品の褒めるべき所は、なかなかの綱渡りを堅実に渡りきった点だと思う。

『ロボットもの』『終末もの』『記憶どうの関連』『離別エンド』

等、もうありきたりもありきたりな設定が並び立っているこの作品。

 

それでいて『全年齢』で『2000円ロープライス』という制限があるというのは、『凡作』に非常になりやすい作品で遭ったと思うのだが、そこを上手くまとめた上で良作に仕上げてくれた印象である。

特に『ロボットは感情(心)を持つのか?』という所について、ここまでこの価格帯で突っ込んだ上で納得させてくれたのは嬉しいポイントだ。

アトリの様々な点を引き出すんだ…!という意気はSDじゃないCGの25枚中19枚がアトリである所を見ても感じられるし、

展開の仕方がちょっと他のやつとは違う、途中で一旦主人公とロボットの距離が離れる感じというのがあったりして、そこに他との違いと面白さを感じられたんじゃないかなあとか。

 

今作品は『ノベルゲームだから、おもしろい。』という旗印の元制作されたわけだが、今作はノベルゲームの扉を叩くには非常に適した作品と言える。

 

まず、この2000円(通常価格2200円)という価格の点。

最近のロープライスゲームでもこういう企業系が作る作品としては相当に安い価格だ。

昨今、アニメやらソシャゲやら、そういう多種多彩な娯楽が存在する中で、あえて”ミナ”ノベルゲーム”に手をのばす人間というのは多くないと思う。

『買う人間は買うけど高い』という考え方は、アニメの円盤にしてもそうだし、ソシャゲの天井とかにまで言われるくらい、”普通の人間”というのは金を出すのを渋っている。

そこでの『2000円』という価格だ。

勿論今作、どうしてもロープライスなので、ここがあっさりとかそういう事を言おうと思えばも言えるわけだが、今回のノベルゲームはどこにターゲットを絞っているのかを考えれば、この価格帯であることは非常に大事だ。

大衆の誰が、フルプライスの一般ノベルゲームなんて買うか?買わないでしょ?多分。

今の時代とノベルゲームと言う物を天秤にかけた上で、フルプライスの超大作ではなく、ロープライスのまとまった良いものを発売したのは現実が見えているし、ライト層に向けての良いアプローチではないだろうか?

 

内容的にも今やとっつきやすいような内容だし、スタッフがスタッフだから安心できるところもある。

非常に企業努力を感じるUIや、価格設定、スタッフ陣…これだけの物をこの価格で手に入れられるという時点で、「一度買ってみ?」とかなり言いやすい作品ではないだろうか?

ただ、あくまでも『雰囲気ゲー』の域を出ることはこの価格帯では難しかっただろうか?

アトリに対してある程度刺さってこないと、満足できない可能性は否定しない。

 

いずれにせよ、今この時代にPCノベルゲームに踏み切ったアニプレックスに敬礼。

今後もノベルゲームへの扉を開かせる作品を制作して欲しい。

 

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以上。