ちゃろ~、おにじです(激寒)
今回は久々のいもウザ感想シリーズ。
ライトノベル感想シリーズにしろよと言われそうな所だが、実質現状続きが出されるようなライトノベルで読んでいるのがこれ以外だと
『エロマンガ先生』(電撃文庫 / 伏見つかさ・かんざきひろ / 2013~)と
『青春ブタ野郎シリーズ』(電撃文庫 / 鴨志田一・溝口ケージ / 2014~)
とか言うアニメ化前からニコニコでボイスドラマしてた電撃の二作品くらいしか読んでいないという現実がある。あと、こういうの一巻から書かないと積み重ねがアレだと思うし、一巻から書く元気もないし。
というわけで、久々にラノベ感想を。
事の経緯
久々なのでざっくりといもウザを読み始めた経緯を振り返っておく。
まぁ最近の記事がやたらとエロゲ体験版記事であることからもお察しいただける通り、筆者はにわかエロゲーマーな訳だが、今年の3月頃にシナリオが全員ラノベライターの『神様のような君へ』(CUBE / 2020)をプレイ。
この中で霧香ルートが物凄く良い出来で、それを書いていたのがこの『友達の妹が俺にだけウザい』の三河ごーすと先生であったわけである。
体験版感想↓
製品版感想↓
いつもラノベ読まない筆者も買うか~、何巻まで買おうか?とツイートしたら三河ごーすと先生ご本人からリプを頂き、全巻…4巻はドラマCD付きの特装版を購入し、すべての感想をブログに書くことになったのが経緯となる。
読者ではなく作者ですが4巻まで出てるので是非4巻まで一気読みしてください。(ダイレクト営業)
— 三河ごーすと@「いもウザ」「自称Fランク」 (@mikawaghost) 2020年3月30日
まぁ簡単に言えばダイマに負けたわけです(身も蓋もない)
前回までは1~4巻を一気に買って書いていた訳だが、今回は久々の感想ブログということになる…
過去の↓
というわけで第5巻の紹介だ。
今回も特装版が出ており、こちらにはドラマCDが付いてくる。
通常版では変わらず彩羽となっているが、特装版の表紙は真白。初の表紙である。
構成は前巻と同じ。嵩上げの厚紙兼ドラマCD入れがある。
勿論初版である。
価格は2400円+税。いや高えロープラが買える!(エロゲ脳やめい
あらすじ
夏休み、影石菫の地元で行われた『縁結びの儀』やカナリアとの新キャラクターの戦いにより、一段とプロデューサーとして成長した主人公、明照。
『縁結びの儀』で一気に進展した感がある彩羽との関係性。
『ウザい彩羽も可愛い』事に気づいてしまった明照は、恋愛感情かは分からないがそれを意識しつつあった。
それに気づいた明照は、その魅力を自分だけが知っていて良いのか?という所にぶち当たる。
彩羽は一個下。他の5階同盟組は先生である菫以外全員明照と同学年である為、彩羽は完璧キャラを演じている状態で来年一人取り残されることになる。
素の状態を曝け出せる相手が、自分以外にも必要だと決心していた。
明照は今日も自分の部屋に入り浸っている彩羽のLIME事情などを聞き出そうとしていたが…
ピンーー……ポォーンーー……。
「およ、珍しいですね。こんな時間に来客なんて」
「…嫌な予感がする」
何かを察した明照が出た相手は真白だったのだが…
『いま、誰と会話しているんだい?』
「ぎゃーーーーーーッ!?」
ハニープレイワークス(通称:ハニプレ)代表代表取締役社長である真白の父、月ノ森社長が襲来したのである。
「ーー明照君、真白、キミたち二人の、偽カップルとしての覚悟を試しにきた」
5階同盟のメンバーを全員ハニプレに入れるための条件である、真白との偽恋人関係を疑いに来たわけである(大体前巻のカナリアが悪い)
「ア〜キ♪今日はお祭りーー特別な日なんだから、真白のおねだりたくさん聞いて?」
「AHAHA。もちろんさ☆。なんでも言ってごらん?」
「あのね、神社の境内に人がたくさんいて怖いから、み〜んなジェノサイドしてほしいの♪」
「こいつぅ、猟奇的だぞぉ」
なんとか心を犠牲にしながらもこの場は収めたものの、真白との偽恋人関係は確かにぎこちなく、彩羽がウザく絡みまくっているという現状はハニプレへの就職を考えると問題とも言えた。
「監視とか、されかねない。何なら学校にスパイを潜り込ませてくるまである」
真白の懸念ももっともなものだった。そんな中での真白の提案は…
「偽装デートみたいなこと、やってみる?」
真白がすべてを仕切る偽装デートが計画されることとなる。
真白に偽装デートの事は任せるとして、まずは彩羽の友達関係について考える明照。
頼れる外部スタッフ兼一緒に彩羽を見守ってきた友人である音井さんに相談してみるが…
「尾行したらどうだー?」
「またずいぶんぶっ飛んだ方向に行ったな」
ただ結果的にほぼストーカーという形で(彩羽公認)で彩羽の関係性を探ることに・
そんな中…
「小日向彩羽…小日向彩羽…小日向彩羽…今日こそ暴いてみせる…!」
え。どうしよう。これ。なんていうか、これさ。
他人様のことどうこう言えた立場じゃないけどさ。
本物じゃね?
めんどくさい嫉妬の仕方をしている女子、友坂茶々良(ともさか・ささら)を発見する。
「ん?何アンタ、ストーカー?」
「あんただろ!?」
この場は菫の登場によって収められるのだが…
そんな中、真白がデートのプランを練ってくる。
「気のせいか、やたらめったら長い気がするんだが……。これ、何枚あるんだ?」
「240枚くらい」
「小説か」
そんな事がありつつも、夏祭りデートをすることになる。
浴衣もレンタルして、真白は今までの臆病とは全く違う、リードしようという気概を見せる。
「なあ兄ちゃん……彼氏なら、止めてやったらどうだい?」
自分で取ると言った金魚が全く取れなかったり、ありとあらゆる屋台の景品獲得ゲームに金の力でなんとか勝利を掴んでいく真白。
確実に良い雰囲気となり、デートとしては色々有りつつも良いものになっていたのだが…
「…迷子になった」
化粧崩れで持ち物を全部置いていった真白と完全にはぐれてしまい、一人になってしまった明照。
そんな中…
「――ばあ」
彩羽が目の前に現れる。
そこでなんだかんだまた茶々良に出会ったりと色々ありつつ…
――なんだよ。そういうことかよ。
明照は真白の居場所に検討が付くわけである。
その場所で、真白は…
雑感
また1時間とか書けてあらすじ書いちゃったわ。
次回からあらすじ無くしていい?って毎度思ってる。
やっぱり文章が面白い
めちゃくちゃ初歩的なことから書くのだが、筆者はこれまでの1~4巻はまとめ買いしており、一週間とちょっとくらいで一気に読んで記事を書いた。
そんな事もあり、今回の5巻が初めて出版されたタイミングで購入したとも言える(4巻はほぼ出版されたタイミングで買ったけど、読むまでに1~3巻を読み時間がかかっているので)訳だが。
単純に三河ごーすと先生が書く文章って面白いんだなと改めて思った。
まず文章が軽快で、読みやすい。すごく淀みなく読める印象があり、筆者は火曜日まで昨日の記事の編集作業に明け暮れており、この感想ブログを書くのが間に合わないのでは?とまで思っていたのだが、あっという間に読めてしまった。
パロディの入れ方も深追いし過ぎない程度にその場で笑える程度で収まっているのも良いのかもしれない。
Nice Boat.にしろ、船で流されるどこかの学校の日常にしろ…
ただ【何様のような君へ】は爆笑してしまった。きっかけがそれだった事もあるのだが…これ逆にここで笑える人間は多くないのかもしれないが、筆者はめっちゃ笑った。
よりラブコメらしく。真白の頑張りが見えた
さて、今回の話では明照が『彩羽のウザいは可愛い』をある程度認めた上での初めての話ということもあり、かなりラブコメとしての方向性に舵を切った所がある。
彩羽との距離が明確に縮まったと言えた前巻から、今度は真白のターンへと移り、かなり関係性が複雑にややこしくめんどくさくなってきた印象。
ヒロインの明照を巡ってのレースの激化がより明白になったというか。
真白との偽恋人関係を疑われた今回は偽装デートをする訳だが、結構お互いが持っている秘密が複雑化していることも理解させられます。
明照は声優Xの事が彩羽である事を他の人間には教えていなかった(途中で乙馬とかにはバレている訳だが)し、
真白は巻貝なまこ先生である事を隠しているし(菫には教えたけど)
真白は5階同盟組には本当の恋人で通っていると思っていたりと、割と秘密が秘密を呼びややこしい関係になってんなあwと。だからこそ、アンバランスに成立している所はある訳だが。
今回は真白の頑張りという所が多く見えた話でした。
いつもだったらここまで絶対にしないであろうことをし続ける真白の成長と意地(金に物を言わせているのは置いておいて)
真白は謎の声優Xが彩羽である事を知ったので、自分に『5階同盟のメンバーである』というアドバンテージが無いことが分かった(まぁ明照はなまこ先生が真白である事を知らないのでアドバンテージになっているのかと言われれば微妙だが)事が原動力の一つとなっていた訳だが、今回出てきた情報としては他にも原動力があったことが分かる訳である。
「知ってる。アキは優しいもんね」
「友達じゃないのに気に掛けてくれる、ホントに優しい人だった」
「……何言ってんだ。友達だったろ。いまはニセ彼女だけど。少なくとも、あのときは」
「ううん。アキにとっての友達は――対等な友達はお兄ちゃんだけだった」
「真白はあくまで友達の妹。お兄ちゃんの妹だから一緒に連れて行かれただけで、真白だから隣りにいてくれたわけじゃないよね」
そう言えば真白も友達の妹だった。
この事は色んな所でさらっと出てくるのだが、この作品って『友達の妹』が彩羽だけじゃなくて真白もなの、結構見落としている人も少なくなさそう。
1巻から『コイツの兄貴と三人、外を駆け回って遊んでいたもんだ』という明記があった訳で。
ただ、この5巻で『従兄弟』というところよりもより『友達』に舵を切られた印象があるのは、『友達の妹』のミーニングがより真白にも該当する感じとなった印象はある。
「だからこれは自己満足。真白が真白に自信を持てるように。『友達の妹から』卒業できるように。過去においてきちゃったモノを全部拾っていくだけの、アキには何も関係ないイベント」
これにより、真白がヒロインレースにより本格的に参戦することを明白とするイベントと言える訳で、6巻以降の展開が楽しみになってくる所である。
そういえば真白である月ノ森深琴は「親父を超えるビッグなビジネスを思いついた」と言って家を出てから、音信不通になっている。はずだから、何かしらで出てくるんだろうなあ…とか思ったり。
真白回だったこともあり、真白の頑張りというのはかなり見えた巻であり、それを面白く、それでいてちゃんと伝わってきているのは良いポイントである。
彩羽と明照の微妙な噛み合わなさ、やっぱ明照は好きにはなれない
根本的な話だが、彩羽はずっと空気を読んできた人間であり、両親の空気を読み続けてきた人間であり、明照がそこに現れて
「空気なんて読むな」と言って、彩羽は明照といる時だけが、空気を読まずに安心してウザがられる事が出来る瞬間である。(第一巻より)
この事により彩羽が明照にウザく当たっているのはそもそも明照によるモノであり、完全に好意によってウザく当たっている…という所である。簡単に言えば『好きだからウザく当たっている』訳である。
その好意というのはここまでの4巻で明らかに分かるものであり、如何に明照がそういう点で典型的な鈍感系主人公かという話ではあるんだが…
明照は『ウザい≠かわいい』『ウザい事をしてくるのは恋愛感情ではない』を3巻まで貫いてきた訳だが、4巻の一件で『ウザい彩羽も可愛い』『恋愛感情が何なのか分かんないけど可愛さは理解した』に前進することが出来た訳だが、やっぱコイツ駄目だわとも冒頭で思うわけである。
――このウザ可愛さの素晴らしさを知るのは、俺だけでいいのか?
才能、魅力の類を世の大勢に認めさせることこそ社会全体の最大効率と考える俺は、自らの心に従って、彩羽がウザく当たれる友達を作ってやろうと心に決めた。
ウザく当たってるのはお前が好きなんだからだよ明照君。
最近非効率な事も普通にするようになっている中で効率云々言い出してびっくりしちゃった。
いや、気持ちは分かるし、理解は出来るし、そういう人間が必要な事は明らかなのだが、そこに至る思考回路がホントコイツ駄目だわとは思った()
一学年下の彩羽は俺や《5階同盟》の他のみんあが卒業したら、すぐそばにウザい顔を見せられる相手がいなくなる。楽しく素直に自分らしさをぶつけられる相手がいた方がきっといいに違いないから。
明照は明らかに善意でこの計画を進めていくのだが、前提条件として今の所そんな事を彩羽が求めているようにはあまり思えない。
空気を読み続けることは確かにしんどいし、そういう相手が学校に他にもいた方が良いことは明らかに事実で、正論なのだ。だからこそ、この明照の考え方はなんらおかしくないのだが、そこに彩羽の心はあるのか?という所はこの5巻でもちょっといじられる所がある。
ここの序文を見た時は、明照が善意でやりきらないかが心配であったが、勿論彩羽の幸せのためにやっており、望んでいなければ意味がない…という思考をしてくれていたのは助かった。助かったけど最後にしっかり失言する主人公にn回目の失望を覚えた。
まぁでも、これが明照の預かり知らぬ所で彩羽が聞いてしまうのが、なんともこの二人のすれ違いっぷりったらないなと。
まぁどっちも悪いのだが、まぁ普通に明照が悪いと思ってしまうのはこういう主人公あるあるではあったりw
彩羽は空気が読めるので、こういう時の動きとしては”分かってはいるけど止められない”という方向性に行くのもあって、多分彩羽が悪いのウェイトが筆者的には下がるのかもしれない。
明照は善意で友達を作って欲しいと思っているのだが、彩羽は明照と一緒にいたいのであって、他は今の時点ではある意味でどうでも良いと思っている。
彩羽は彩羽で、これは問題であり、本文出てくる通り5階同盟で根本的に変われていないのは小日向彩羽その人であり、依存し、生きづらくしている(まぁ親の影響も大きいのだろうが)のは事実だし、それをなんとかしたいと思う明照は善意だし、正しいのだが…じゃあ何が引っかかるのだろう。
明照の悪い所はそこで”彩羽のプロデュース”という言い方しか出来ない所なのかもしれない。
自分は彩羽と真白に対してクソ野郎なのではないかとか気にする割には、この辺のクリエイター思考が人をちゃんと人として見れているかへの疑問に繋がるような気もする。
まぁ明照はクソ野郎なので仕方がない。この作品で一番嫌われるべき存在になってしまうのは作品の形式上仕方がない、でもコイツはやっぱり思考的な所で人間として欠如してる所がある。
アニメ化して欲しいと心から思っている作品だが、ドラマCDの系統を考えるとコイツが12話で「なんだって?」って何回言うんだろうと思うとちょっとイラッとするくらいにはこの主人公は別に好きじゃない。
何も悪くない、明照にとって善意であり、それが効率的であることは理解できるし、コイツの行動が理解できない訳ではないが、どうも無性にイラつく主人公ではある(嫌いにならないのは、典型的なクソ主人公のストライクゾーンからギリギリ外にいるからであると思っている)
彩羽が変わるために色々することが必要なのは分かるのだが、明照は自分はプロデューサーであり裏方だと思いこんでおり、自分が登場人物である事を理解していないのが多分腹が立つんだと思う。(まぁ理解してしまったらおしまいと言えばそうなのだが、見守ってきた人間ならプロデュースとか言う言葉口にするなよとか思ってしまう)
だからこそ「彩羽が俺に対してするようなウザ絡みを他の奴にも出来るように」までは良いとして、
「俺と一緒にいる時間よりも楽しいと思える親友を、作ってやりたいんだ」
とか言える訳ですよね。お前が好きなんだよなあ…
お前より楽しいやつなんて必要ないんだよなあ…余計なお世話なんだよなあ…
「彩羽が俺に対してするようなウザ絡みを他の奴にも出来るように」にするのは良いけどお前より楽しいやつはいらねえんだよ明照の野郎。
色々言いたいけどまぁ「アホちゃうかコイツ」で収めておこう。
言っていることは正論だし、そうであるべき事なのだが、お前より楽しい必要はないんだよ…
この作品『友達の妹が俺にだけウザい』というタイトルなのだが、この明照も効率厨のくせに大概おせっかいであり、その善意が『ウザい』に振り切れる場面が存在するが、5巻はそれが明らかに顕著であり、この主人公ムーブが彩羽のターン、彩羽の逆襲のために必要なカードである事は理解しているのだが、コイツも大概ウザい。
4巻で多少人の心を思い出したかと思ったのだが、コイツの情動(カルマ)を前提からぶっ壊してくれないと…
の割に大事なところには気づくんだよなあ…なんなの?お前(まぁ気づくから嫌いにはならんのだが)
1巻から『コイツは効率厨だけど効率厨じゃないよ』って示され続けている訳だが、このブレがああああああもう!!ってなるから筆者は多分ラノベを多く読めないし、だから青ブタの主人公好きなんだよなってなった。
でもラノベという媒体上そうしなきゃいけないのはそうだし、それは理解してるし、話は面白いし、構成が上手いって話は後でするんだけど、たまにこうやって吐き出さないと筆者には無理。
主人公への愚痴を言うとこの作品の面白さを話せなくなるので、とりあえず話し進めろな???
相変わらずの構成と伏線の置き方と回収の仕方
彩羽の話は一旦置いておいて、ここで三河ごーすと先生とかいう作家は相変わらず作り方が上手いなあと。
今回も一話完結型の伏線ばらまき回収をしてくれた訳ですが…(他にも置きっぱなしの伏線とかは前述の通りあるのだが)
今回の伏線はこういう所から。
「何言ってるの、アキ。当たるまで回せば排出率100%」
「だから作家特有の一瞬納得しそうになるゴリ押し理論はやめろ!」
「離して!真白は絶対に、止まらないから!」
「なんという威勢。金持ちの家のお嬢さんは違うってことかねえ……よっしゃ、おっちゃんも腹をくくった。カノジョさんの漢気に応えるぜ、新しいポイを受け取りな!」
「おじさん、助かる……!見ててアキ。これが真白の、覚悟……!」
真白が金魚すくいに対してマジで金の力で取ろうとしているという所の何気ない会話だが、これが伏線だったわけである。
明照も真白も、真白が『金持ちの家のお嬢さん』とは言っていないのにこの発言があった。
一件読者は真白が『金持ちの家のお嬢さんは違う』であることを知っているので、さらっと流してしまいそうになる内容の文章だが、これが伏線になるわけである。
花火のシーンは挿絵の雰囲気も合わせ、右に一行だけの本文という見開きは非常に美しい物があった。
これが出来た理由に伏線が使用されるということ。
夏祭りのおっさん連中全員が月ノ森社長のスパイだった…というのは、ある意味トンデモなのかもしれないが、今までの月ノ森社長の行動や、ハニプレの企業規模などのバックグラウンドがある上でのしれっとした伏線、素晴らしいと思う。
月ノ森社長の動機も後に記載されているわけだし。
いもウザの伏線の良さは、気づくか気づかない程度の伏線が割と多いことなのかもしれない。
ここ大事って思って無くてもなんとなく残っている文章が後から効いてくるのが素晴らしく良い。
一巻一巻の締まりが非常に良いのは良いことだし、それでいて最後に何かを残して次を気にならせるという手法は非常に良い。
ちゃんと〆て、引きが上手い。そればいもウザなのかもしれない。
新キャラ登場
友坂茶々良というキャラが新登場した。
恐らくこのキャラクターが彩羽がウザさを出せる(出さざるを得ない?)相手になっていくであろう、次席。
明らかに彩羽に対して対抗心を持っており、コイツはコイツで面倒そうとも思えるキャラだが、コイツ絶対に面白いキャラになりそうという予感はなんとなく感じた。
相性が悪そうで相性が良さそうなキャラクターって良いよね。
最終的にそのポジションに収まってくれる事を期待。
なんか霧香の声で再生されちゃった、もっとイキってるんだけどコイツのほうが。
なんだかんだ必要ポジの音井
地味に出てくる音井さんの存在だが、この人はなんだかんだで必要及び重要なポジションと言える。
年齢上だろこの人とか思えてくるが、そういうわけではないのが面白い。
全てにおいての感情がほぼなさそうである漢字とか、それでいてなんだかんだ明照にとってもビジネスライクと言いながら、どうも彩羽を引っ張り出した一人であり、重要人物っぽいし、
今巻でも明照の相談には乗ってくれているし(適当ではあるが)彩羽にとって音井の家が『第三の実家』であり、『お姉ちゃんの家』という表記は、この人がより重要なキャラである事を匂わせてきている。
善意の行動で友達を作ろうとさせている明照と、それを自分との時間を減らしたがっているのかもしれないと思っている彩羽。
このお互いのすれ違いがどう擦り合わされていくのか?という点でも意外と重要な働きをしたりして。
まぁそれを真白がやるのかもしれんが…
どちらにせよ今回の最後の引きは彩羽の心の吐露な訳だが…
吐露の中の巧さ
筆者はこれは対じゃないのか?という表現を、この彩羽の最後の音井さんへの吐露で思ってた所がある。
「どうすればいいかわかんない!私……全部好きだから……ッ」
これは罰だ。
ちゃんとセンパイにストレートな想いを伝えずに来た天罰。
神様は正直者にキスをする。
真正面から告白して、全身全霊でぶつかっていく真白先輩だからこそ、センパイの横をもぎ取れたんだ。
これ、最後の一部分なんだが、この『罰』という部分に見覚えがあった。
これ、一巻の幕間の『彩羽の気持ち』にあった。
『空気なんて読むな』
『限られた人生の時間を、他人のせいで無駄にするのは馬鹿らしい』
そう言って、私に新しい世界を見せてくれた。
――それ以来、センパイはずっと私の好きな人。
生まれて初めて空気を読まなくていいと思えた相手。
ありのままの自分を安心して委ねられる相手。
もしかしたらセンパイはウザすぎる私の行動に迷惑してるかもしれないけど、そんなものは人を夢中にさせておいて好意にまったく気づかずに生殺しにしてくる罰だ。ざまあないですね☆
うん、これ対なのでは?
1巻の時点では想いを伝えずにウザくしているのはセンパイへの罰だ。という事を言っている彩羽だが、
5巻で素直に伝えず(ウザくしてきた事)の自分への罰だ。と言っている。
よかれと思ってやっていたことで不利益を被ろうとしている…という事で、この罰は相手への罰のつもりが、自分への罰になっていた…という風に読み取ることも可能なのである。
う~ん面白い。
改めて一巻を読むと、彩羽という人間に他にもウザく当たれる人間が必要なのは間違いないんじゃないかなと思った。
だから明照が考えていることはやはり間違っていない。しかしお前より楽しい必要性は多分彩羽にはないし、その言葉で彩羽を混乱に陥れる主人公はマジ主人公である。
〆
やはりこのラノベ面白いんだわ。
この巻の最後の方に天地乙羽こと小日向乙羽…まぁお母様が出てきていまして。
まぁ月ノ森真琴…月ノ森父と話しているわけだけども。
「……やっぱりあの件について、まだ根に持っているんだね」
「ええまあ。子ども達には絶対に近づけたくないと思う程度には」
聖母の如き笑顔。だけどその声に含まれた見え内圧に、流石の僕も冷や汗を禁じ得ない。
その周年じみたほどの暗い感情も彼女のコレまでの人生を思えば同情できるが、しかしひとりの人の親として、彼女の子どもたちが哀れに感じることもある。
と、明確に乙羽の人生において、何かがあったことは間違いない事が補強されている。
また、
「彼(明照)は彩羽にエンタメの魅力を吹聴しかねないですから――」
「付き合われると困る、と。乙馬君の方はいいのかい?すでにかなり仲が良いんだろう?」
「まあそっちは大丈夫かとー。あの子はべつに、何があっても特に影響ないでしょうし」
「なるほど……?」
妙な言い回しだ、と思った。
と、乙馬に関しても不穏と言うか、なんというか…という感じのセリフを残していたりと、そもそもの根幹の話の伏線ははられ続けている印象がある。
今までのことを考えるとキレイに回収してくれるんだろうなあ…(期待)
今回の巻は真白回でありながら、彩羽が能動的に、根本的に変わるためのきっかけという感じの回にも思えた。
なんだかんだと空気を読めすぎてしまう彩羽、今の状態で良いと思っている彩羽が変わりたいと思えるのかという所。
現状の状態だと、明照の思いだけが先行してしまい、彩羽を最終的にある意味で傷つけてしまうような展開となってしまった訳だが、明照の思いは正論であり、そうなるべきではある。
だからこそ、彩羽がなにか変わらなければならないという事になるわけだが…
真白とのヒロインの戦いは、真白が持っているカードをかなり五分に戻した感があり、より激化の一途をたどる予感。
今後のいもウザも期待しておきたい所。
すでに6、7巻が決定しており、7巻はドラマCDがまたついてくるらしい。
今巻のドラマCDも聴いたが、やっぱり花澤香菜にああいう役をさせるといいなと思った(ヒロインの話しろやい!)
いやクソ長くなっちゃったな?
以上。