声オタおにじくんの声学審問H!

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過激派で有名な(?)おにじさんが、声優の事を語ったり。

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おすすめ記事

『 #アオナツライン 』の系譜に足りる作品となれたか?Wonder Fool『 #ユキイロサイン 』製品版感想

ちゃろ~、おにじです(激寒)

 

今回は、エロゲ製品版感想記事。

久々のエロゲ製品版感想記事である。

製品版の感想記事は、『響野さん』にまで遡る必要性が有るらしい。

oniji.hatenablog.com

 

体験版感想は、割と出しているのだが…

oniji.hatenablog.com

oniji.hatenablog.com

oniji.hatenablog.com

 

実のところ一応ガラス姫は製品版やってるのだが、感想ブログを書くほどでもなかったのである、許して(

 

という事で今回は体験版感想も書いたWonder Foolの『ユキイロサイン』の製品版をプレイしたので、感想を書いていこうと思う。

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プレイ前所感

Wonder Foolから発売された『ユキイロサイン』。

そのタイトルからもある程度察しがつく通り、2019年に戯画から発売された『アオナツライン』の系譜を汲んだ作品である。

 

『アオナツライン』は、夏を舞台にした学園青春モノ…と言った感じであり、戯画作品の中でも久々に大きく評価された作品であった。

この『ユキイロサイン』は、その『アオナツライン』のスタッフがまた制作したものである。

 

…という言い方が厳密には性格ではないのが、この作品のややこしい所である。

実際、原画はうみこだし、シナリオに冬野どんぶくがいるので、『アオナツライン』の制作陣が居ることに間違いはないのだが、企画と2/3のシナリオをやっていた大地こねこがいないのである。

大地こねこがKeyに行ったので仕方がないのだが、『アオナツライン』の作品においての面白さというのは過半数以上この大地こねこが書いた海希とことねであった事は否定できない。

冬野どんぶくが書いているのは、結ルートだけである。

 

そういった意味で『企画・シナリオ:大地こねこ』ではなく、『企画・シナリオ:冬野どんぶく』である時点で、この作品は『アオナツライン』の系譜を汲んだ作品であることは間違いないのだが、正当後継かと言われると疑問符が付く。

 

筆者個人的な考えとしては、結ルートは実羽ゆうきが割といつもと違う声を出しているという印象はあるものの、海希とことねルートには及ばなかった印象がある。

そういうところを含めて、この作品に対して”絶対に過剰な期待はしない”というスタンスを発表時点からとっている。

 

実際、ちょっと批評空間で”冬野どんぶく”って入れて調べると直近のWonder Foolが爆死していたので、やっぱり不安じゃないと言えば嘘になるのである。(まおかつさん…)

とは言え、作品の雰囲気等は相変わらず良さそうだし、体験版をやった上で地雷という事はまぁないだろうという良さは感じた。

とは言え、これはあくまでも『アオナツライン』とは別物という風に考えないと絶対に肩透かしを食らうものだという程度の期待感で製品版に望む。

 

まぁそれとは裏腹にやたら『アオナツライン』の設定テンプレートに当てはめてきているので難しいのだが。

この時点で絶対に『アオナツライン』を超えることは無いことは分かりきっているので、そういう意味では楽観視出来るのだが…

 

 

UIチェック

基本的に体験版と変わっていないので、体験版記事に準ずる。

oniji.hatenablog.com

エンジンはArtemis Engine(アルテミスエンジン)であり、これはまどそふとや、Navelなどでも使われているのだが、この『ユキイロサイン』はこの2メーカーと違いフルHDであり、これは高ポイントとも言える。

 

問題点としては、今どきコンティニュー機能が無いことをまず上げておく。『アオナツライン』も確かにコンティニューはなかったのだが、あれは戯画のNeXASエンジンでコンティニュー機能付いているの見たこと無いので、あれはエンジンサイドの問題だろうが(NeXASあのクソレンダリング文字どうにかならんのかね)Artemisはまどがコンティニュー付けてたので、多分付けられる。普通に付けてほしい。

もし付けないor付けられないのであれば12×9しかセーブスロットがないのやめて欲しい。少ないだろ、コンティニューない作品としては。

 

あとこれはWonder Foolというよりは、恐らくアルテミスエンジン側の仕様の問題なのだが、とにかくかゆい所に手が届かないと言うか、微妙な不便が積み重なっているシステムである。

 

まずフルスクリーンとウインドウの仕様。

フルスクリーンは強制最前面である。何をしようにも絶対に一回ウインドウにしないと他の操作が出来ない。正直馬鹿げた仕様である。ウインドウズボタンすら無視するレベルである。

ウインドウはウインドウで定格サイズ機能が全くない。別にいらないと言えばいらないが、適切なサイズにしないと文字潰れとか普通に発生するので、定格のサイズのテンプレートくらい入れて欲しい。

 

次に選択の挙動。

これはセーブ・ロード、お気に入りボイス登録時に発生する仕様なのだが、セーブスロットを押してから確認の『はい』『いいえ』が出るのだが、この挙動がはっきり言ってうんこなのである。

まず、そもそも他のエンジンであれば『はい』にポインタが行く仕様になっていて、これもオンオフが可能だが、これにはそういうのがない。

だったら押してすぐに『はい』に持って行きたい訳だが、『はい』が表示される前に『はい』の所にポインタを持っていっても反応しないのである。

一回動かさないと判定が出ないという謎仕様であり、割と地味にムカつく。

 

まぁこれは良いのだが、バックログで表示されるのが直近3つなのもちょっと少ない。いや、別に良いんだけど、ブログにする時の情報量としては困った(

 

まぁUIはそんな感じ、コレ以外は別に不便はそんな無いと思う。多分。

 

 

雑感

体験版範囲に関しては体験版感想側で…(

 

製品版における共通ルートはそこまで多くなく、宗冬・実玖・広中でのテントの下りと、スヴェのバイトの件程度である。

選択肢は一つで、もうそれを選んだ通りのルートに入っていく事になる。

テントの下りは、実玖が変われていない事を表すシーンだが、その概要というものはそこまで見えてこない。

しかし最近は選択肢一つ系統多いよなあ…別にいいんだけど…

筆者攻略順は香子→スヴェ→実玖。

結局の所恐らく推奨攻略順はこれになる。まぁ香子とスヴェが逆でも問題はないと思うが…

 

香子ルート

香子ルートは、有る意味で体験版の段階からある程度展開が読めるヒロインと言えただろう。

スキーの才能があるが、怪我をしており、自分に自信がないタイプの人間である。

これにどう向き合っていくのか?という所が基本的な展開となっていくことが予想できたし、実際基本的な流れとしてはそういう流れだった。

 

ある意味この中では一番ぬるっと付き合っていくパターンであり、なんとなく学生感が強めのルートと言える(いや全体的に強いのだが)

香子の宗冬へのとっかかりが”親近感”である所がこのルートの肝とも言える要素であろう。

自分に自信がなく、人との付き合い方という所も上手くはない香子にとって、宗冬というのは親しい存在に見える訳で(他のスヴェとか実玖とか広中とかがそういうの上手いこともあり)

宗冬も医者という将来への道みたいなものが一応前は存在した訳だが、結局それが義務なのかとか、レールに敷かれたものじゃないのかとかそういう事を考えてやめている訳だし、明確な夢がある訳ではないけど、周りに流されるのは嫌とか、色々と近い所があるのは事実である。

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そんな親近感の所から付き合う流れになっていくわけだが…こういう所で色々と絡んでくるのが弓田結である。

このキャラクター、最初はとにかく感じ悪い初登場の仕方が印象に残るのだが、結果的にこの作品においての良心はこの女である。

一番めんどくさそうに見えて、一番めんどくさくない女が弓田結である。

結局の所、今の時代ありえないレベルのツンデレ…というか、めちゃくちゃこじらせたツンデレであり、逆にわかりやすい所があるからである。

 

結局この結の「付き合ってるの?」からこの二人は付き合うわけであり、なんだかんだで他ルートでも話に絡んでくる。

距離の縮まり方としてはあるあるなテスト勉強とかを経てな訳だが、この辺のテスト云々は『アオナツ』ことねルートとかぶる所は存在する感じでは有る。(まぁあっちは都会に憧れる後輩で、こっちは都会から来た転校生後輩なので属性は異なるのだが)

 

『アオナツ』でも存在したが、実玖は本当にあの二人が付き合っても良いのか?というシーンが存在する。

実玖は香子ならいいかなあ…という結論を持つ。”香子なら良い”という所は割と重要だったりする。

 

ここで二人の明確なズレが存在するのはもう明らかであり、宗冬は香子のスキーの上手さとかを含めて香子の方が上だと思っているし、

香子は宗冬のスタンスとかに親近感を持った上で宗冬の方が上だと思っている。

お互いが自分のほうが下、こんな人と付き合えるなんてみたいな方向になる訳で。

その上で香子はそもそも宗冬に対して親近感を覚えている所がとっかかりなのがタチが悪い(当人も親近感だからっていうのは絶対よくないと付き合う前には言っているのだが…)

 

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そういう明確なズレが引き起こす明確な衝突…という所の描写は割としっかりしていた印象がある。

宗冬は香子に対して役立つ人間になりたいという思いで、もう一度医者を目指すことにするわけだが、『今の宗冬』に親近感を覚えている香子にとってはどう考えても逆効果である。(まぁこれは双方の視点を見れているからこそ分かるわけだが)

香子は今の宗冬が好きなのに、宗冬は香子の為に変わろうとするというこの矛盾とも言える形になるのは、どっちも言わない所は言わないみたいな所があって(まぁ香子は似てるって話を何度かしているのだが…)みたいな所もある。

ただ、医者になるという事を恥ずかしくて言えないだの、もうちょっと道が確定してから言った方が良いだろうとか割とのんきな事を言っている宗冬側にどちらかと言えば非があるようにも思えるし、親近感云々でそれが変わるのが嫌とか思っている香子側が情けないと言えば情けないし、割と難しいやつである。

 

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これは『アオナツライン』からの系譜を感じさせる所だが、所詮学生の恋愛という所がある。端的に言うなら”未熟”であるという事。

だからこの作品での『止められない』とか、『ダメだから』とかに対して「いや止めろよ」とか「ダメって分かってんだったら是正しろよ」とか言い出したらおしまいなのである。(筆者は半分おしまいになりかけたが、このルートではない)

この作品の良い所をもう一つあげておくと、ルートに入っても他ヒロインの出番はかなり確保されるし、関係性が変わらないこと。広中も随所で絡んでくるし、そもそもの登場人物が少ないこともあり、キャラクターが基本的に存在感が薄くなることはないという事。

 

結局の所、これは香子の自分勝手感が強いから、香子の方が割合的には悪い雰囲気はあるけど難しい話である。

実玖の「多分、100人に聞けば100人は、香子が悪いって言うと思う」「それでも、私とスヴェは101人目と102人目なの」というセリフはなんとなく名作ポイント感がある(名作ポイントってなんだよ)

また、実玖は香子が香子自身を悪く言うのを聞き捨てならないという雰囲気だが、これも一貫している形となっていく。

ここからこのルートはもう一回”転”をぶち込む。それが雪下ろしの事故云々なのだが…

 

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こういうある意味での”分からず屋”というか、ひねくれ者というかのヒロインに対しての”主人公が事故に遭う”は極めて万能であり、どれだけ唐突に起きても問題がないのずるいと思う。

これは他の作品でもある訳だが、何のフラグも必要ないし、非常に便利である。

まぁこれに関しては見せ方でどうにでもなるのだが、このルートは別に上手くはなかったかなあと思う。

結局スヴェたちの気遣いによっての事故になるわけだが、そういうのは1つ目であっさり起こされてもあんまり衝撃的展開にはならないと思う。何個か踏んでの何個目とかで起きる方が良いんじゃないだろうか、二人の関係が結構戻ってきたぞ…!という雰囲気を出すにしても、そこからの事故にしても、その期間が短すぎると説得力というものが出ないんじゃないだろうか。

中途半端な唐突感というか、創作物感が強まると言うか…そういう意味では『ハミダシクリエイティブ』(まどそふと / 2020)の方がまだ良かったような気がする。

いや、別に良いんだけど。悪いとは言わんし。

 

ここでの宗冬の言っていることはド正論なのだが、それをぶつけてどうするんだという所もまた未熟ポイントである。

そんでもって「価値はない」ではなく「価値があるのかな?」なのもポイントかな。

 

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こういう面倒くさい奴らばっかりのゲームなので、やっぱり弓田結はこの作品における最大の良心だと思う。

『ここで行かないと本当にヤバい』という状況に追い込まれたときはちゃんと出来る人間。いや、他のキャラもそうではあるんだけど、結果的に出来るまでの過程に時間がかかる人間が多いので、割とスパッと行ける結は良心に思えてしまうという(もちろん作品開始前からこういう形だったことを考えれば、良心という言い方は正確ではないんだろうけど)

 

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香子の背中を最終的に押すのはうー婆というのも割と面白い。(まぁこの結果主人公の影が薄くなるんだけども)

宗冬の言いたいことというのを上手く翻訳してくれる年長者っていうのも面白いんじゃないだろうか。

しかし、香子もアクセルを踏むと決めると120で踏むような人間なのがなんともまた面白い所。

アホみたいに爆弾発言しかしないし、決めた時の突き進みようはなんだかんだスキーの才能があって上で戦ってきた人間の闘志のようなものが感じられる場面であり、ここの熱を感じさせるような実羽ゆうきの演技は流石と言っておいていいだろう。

 

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弓田結が一番かわいいルートでもある。

というか、割と上原あおいのキャラクターの声ってパターン化される所があるが、このキャラ性もあってそこからちょっと外れている感じもあってそういう意味でも好印象だったかもしれない。

お嫁さんになりたい、花嫁修業をしたいだのもうアクセルを踏み切る香子は暴走しているようなもんである。

共通の音ゲークッソ上手い所とか含めて「少しだけ音ゲーが上手い」とか言う香子の場面は彼女の自己肯定感の低さを明確に表したシーンだったり…

とにかくイチャつきまくってはいるので、微笑ましい所ではある。

 

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大きなステップではなく小さなステップを積み重ねていく感じがこの二人らしい所と言える。

香子というキャラクターの描写の仕方としては結構良い感じで、表面上、内面、隠されていた情熱的なモノ…とかの描き方は良い感じだった。

香子のスタンスという物は共感が出来る所も割と多いという人も多いだろうし、全体としても話がまとまっていた。

ベタと言えばベタな所も序盤は多かったが、そこから割と変則にしようという努力も感じられた。

 

声優は実羽ゆうきで『アオナツライン』から唯一の続投となった訳だが、今回は比較的ストレートな実羽ゆうきだった(というか『アオナツ』が非常に変化球だった、まぁある意味これ以上の変化球を『恋愛×ロワイアル』(ASa Project)で投げるんだが)

なのでいつもの実羽と言えば実羽だが、後輩キャラというのはちょっとめずらしい気もしなくもない(割とお姉さんやってるイメージだがどうなんだろうか?)

とは言え、ツッコミにしろ、一人で居る時の喋りにしろ相変わらず上手い。

特に「ああああああぁぁぁ」みたいなセリフを「あ」と明確に発音しない所とかが個性と上手さが出ている。こういうのって後悔したときとかのセリフに多いわけだから、そういう演技は非常に心情と合致するポイントだし、上手いなあと思う。

 

 

スヴェルート

続いてはスヴェルート。

明るい留学生で、トラブルメーカーでもありつつも愛される存在みたいなヒロイン。

とは言え、体験版の時点から『やらなきゃいけない事』のリストのようなものが存在し、それがお母さん関連である事が示唆されていたりしており、そういう所が描かれることはなんとなく分かるヒロインとなっている。

 

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ルート最序盤に関しても、スヴェのこの手帳のリストというものに関して触れられているし、この時のスヴェは今までになく真剣という描写が有る。

スヴェは基本的に明るく愛されるキャラクター性が全面に押し出されており、表情もコロコロ変わる子である。

だからこそ、ここにおいての温度差というものは非常に必要と言えるわけだが、こういう明るいキャラに対してそういう有る意味での陰を見せるというのは割と難しいところがあるように思える。

その点、スヴェの声優である北大路ゆきは、ルート通してその空気感の出し方というところはしっかり出来ていたように思える。

スンッとモードが変わる感じがあるというか、そこにある意味での危うさも感じる所があったのは良いポイントだろう。

 

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また、このルートでは実玖の姉である柊佳が登場、ちなみに実玖ルートにも登場する。

こっちもトラブルメーカーというか、なんというかこう…

実玖とは正反対とも言えるキャラクター性だが、割と相性は良いというか。

この人が明確に動くと言うか、話に絡むのはどっちかと言うと実玖ルート。

 

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こっちのルートではどっちかっていうと家族方面での不穏さを常に感じさせる方向性である。

やりたい事リストと親に愛されてるかどうかみたいな事において色々と問題が発生しているというか、不穏な物を感じさせるというか…

こういう明るいキャラクター性に対しての不穏の置き方というのは結構怖さまで感じる感じがあり、個人的には好みだったかな…

弱さをみとめた上で、それでも笑顔でいられるスヴェが宗冬的には羨ましいと思うわけだが、この主人公も割と過去にとらわれている所もあるかもしれない。

 

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新メニューを考えて欲しいという割と無茶な依頼に対して、結構詰まっていたスヴェだが、そこに宗冬の何気ない一言がアドバイスとなり、打開していく事になる。

ここら辺になってくると…というかもう共通の時点から分かっていた事だが、スヴェのお母さんという所がより明白になってくる(はっきりと分かってくる)

そしてそれと同時に、二人の距離感というのは確実に縮まってきている。

 

それに実玖ももちろん気づいているわけで、二人になんか嫉妬してしまいつつも、それをくだらない感情とか、でも愛おしいとか色々言っている。

実玖の心情の面倒臭さというか、ややこしさというのは、香子ルート含めめちゃくちゃ描写されており、その面倒臭さが比較的わかりやすく書かれているのは良いと思う。

言うなればこの辺りも含めて実玖ルートへの布石である。ここでも「スヴェならいいか…」というスタンスな訳だし。

 

スヴェの両親は小さい頃に離婚していて、スヴェは母親と長らく会っていないという事がこの辺りで明らかとなっていく。

この地雷を踏んだのは柊佳なのだが、彼女の人の良さというか、ポジティブな所で上手いことするのだが、こういうのも実玖は自分には出来ないな…とか思ってるわけで。

なんというか、それぞれの心情においてのリアリティ感というのは作品を通してがんばれていた印象では有る。

 

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あぁ好きなんだと自覚する所は香子ルートでもスヴェルートでも存在するわけだが、そこからドンと告白して、スヴェが逃げるというのは、なんともスヴェらしいというか、オーバーヒート感があるというか…

このルートにおいても、スヴェに行ってこいというのは香子と実玖なわけで、他のヒロインが他ルートでも消えないような配慮というのは相当にされている印象がある。

これは広中も同様で、基本的に宗冬が相談しているのは広中であり、そういう所での全キャラクターが必要であるという努力は見られた。

…まぁ努力は見られたんだけど個人的には…というのは実玖ルートで言うべきだろう。

告白シーンはなんというか有る意味で王道に近い形というか、スヴェらしい感じになったんじゃないだろうか。

こういうキャラクターは思いっきりぶつける以外の手段を基本的に持たないものだからね(

 

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お母さんが経験した事が手帳には書かれていて、それをやることで立派な人間になって、いつかお母さんに会いたい。

ママパパは上手く行かなくて、それもあってパパとは仲良く出来ていないとか、色々と事情が分かってくる中盤。

自分で絶対に達成するという強い意志があるし、それを言わずに手伝わせている皆への罪悪感もあったりと、結構スヴェの真面目な所が垣間見える。

有る意味で全ての原動力とも言えるのが手帳である訳だが…

スヴェが非常に真っ直ぐな子である事がよく分かる。

 

この辺りの事情というのが明らかになるにあたって、田舎ならではコミュニティ形成というか、古臭いご挨拶云々というのが絡んでいるのは上手いと思う。

こういう家族事情云々という設定は割とありがちである事を考えれば、テンプレ感を思わせるポイントになり得る訳だが、これを作品全体の舞台設定に組み込ませることによって比較的自然な展開にすることに成功した感じがある。

今の時代、テンプレ設定から抜け出すことは非常に難易度が高いという事を考慮すると、まぁこれはよくやったほうであると評価すべきポイントなのではないだろうか。

 

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スヴェがまっすぐだったからこそ、その全てを根底にひっくり返されるような事が起きた時のダメージというのはもちろん計り知れないとは思う。

幼少期の記憶なんてあいまいなものだし、そこに対して離婚というショックが存在したのであれば、母親はスヴェの育児に疲れていたとか、適当言っていたとかいう事はあり得ることであろう。

また、この話にもうー婆が関わっていて、スヴェは真実を知るべきだが、お父さんの言っていることも分かるというスタンスはあの人が「う」しか基本的に発言しないがこの作品の中で一番人として出来ている感じがあるわけである(老害ではないという事)

また、スヴェのお父さんのスヴェの思い出を壊したくないというスタンスは自分を犠牲にしてでもスヴェに有る意味で幸せでいてほしかった感じがあり、否定することは難しいだろう。

誰が悪いわけでもないとは思うというさじ加減は割と上手かったんではないだろうか。

 

ただ、ここでスヴェは割とねちっこくいじけるのだが、ちょっとこれはしつこいというか、くどかったと思う。

無論、ここがくどくないと後の展開につながらないとは思うのだが、スヴェというヒロインの株をただひたすらに下げるような展開とも言えた気がする。

しっかりと理由は明記されていたし、スヴェがそういうふうに思うことに違和感を抱くことはなかった。

大好きな人達が本当は自分を愛していないという事が怖いのは分かるのだが、それにしても引っ張りすぎというか、この作品もうちょっと引っ張るべき所で引っ張らないし、そこまで引っ張らなくて良いことで引っ張りすぎた気がする。

 

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でもそうでもしないと実玖の強硬手段という名の見せ場につながらないことも分かりはするし、納得はするのだが、だからといってアレがくどくなかったかと言われるとそうは言えない気がする訳である。

ここの場面としては非常に良かったと思うし。猫村の演技も結構良かったと思うし。

真っ直ぐな女がおられた時というのはこんなもんと言えばそうなのだが、これは恐らく筆者サイドの忍耐力の欠如の所もあるんだろうなあ…

 

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宗冬も宗冬で割と一番思い切った事をしたのはこのルートだった気がする。

ロシアまでついていくことにするから割とぶっ飛んでいる。

でもやっぱりヒロインの見せ場が多いから宗冬の存在感というか、主人公感が薄いのが気にはなるのだが。

でもそういう突っ走り方をするのは主人公らしいと思うし、いいムーブだったと思う。

 

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母親の面影を追うことからの決別が最後に描かれてこのルートは終了する。

追うことから、自分で作り出していく事に歩みを進められたスヴェは色んな意味で成長したことであろう。

ルートの展開としてはまとまっているし、理由付けというところに関しては作品の中でも出来ている方のルートだったかもしれない。

ただやっぱり個人的にはちょっと折れた所が長すぎた気がする(香子のときは転への動きが短すぎたと言っているのでバランスが個人的には合わないんだろうなあ…)

そんなに「私はダメだから」は万能じゃないぞ…と思ってしまったので(

とは言え、だからといって低評価かと言われるとそういう訳ではない、雰囲気も良かったし、展開としても不自然ということはなかった。

 

スヴェの声優は北大路ゆき。

エロゲ声優においての若手期待の声優の一人だが、今回も一定以上の成果をしっかりと示してくれたのではないだろうか。

筆者の対戦的には割とここまでストレートな子っていうのも珍しい気がする(どこかツンデレとか、ウザいとか、そういう傾向が多い印象がある)のだが、それでも問題なしというか、コロコロ表情が変わるスヴェに対して、それに見合う情報量の有る、感情のある演技が出来ていた用に思える。

前述したように、こういうキャラクターは逆に真剣味とか、陰を出すのが難しい所もあると思うのだが、スヴェのキャラクター性を損ねない(キャラ崩壊しない)程度の所でスンッと空気を変えられていたように筆者としては感じている。

そういう所を含めて喜怒哀楽の表現が非常に重要なキャラをしっかりと演じられたと思う。

 

 

実玖ルート

では、最後のルートである実玖ルートを話していこう。

実玖との関係性という物は幼馴染であるわけだが、過去に何かしらあったことをひたすらに示唆し続けている。

お互いがお互いを傷つけたと思っている所も非常にややこしい。

とは言え、ギクシャクしているような関係性でもないし、なんというかこの微妙な距離感は面白くもあり、リアリティもあり、そんでいて面倒くさい。

この作品のヒロイン、どう考えても全員面倒くさいのだが、明らかに群を抜いて面倒くさいのは実玖だろう。

そういう所含めて、付き合うまでの過程が一番面倒そうに見える訳だが、どうだろうか。

 

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このルートでも柊佳が最初帰ってくるのだが、そこにおいて『また彼を取られるかもしれない』という言葉が出てくる。

ここから、宗冬と実玖、そして柊佳の過去の話が掘り下げられていくことになる。

実玖も割と自分が嫌になるタイプであり、香子の方がその方向性が強いと言えば強いしそれが割と外にも露骨に出るのだが、実玖はそういうのがあんまり外に出ないので、それが逆にタチが悪いと言えば悪い要素のようにも思う。

 

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柊佳というキャラはなんというか、本編にも出てくるが傾向としてはスヴェに近い所がある。

悪気は基本的にないし、ちゃんと姉っぽい所も存在するし、でも割と暴走する、でも親しい所には変に遠慮する…と言った所で。

このルート、基本的に柊佳が余計な事を多くするわけだが、彼女の置かれた立場から考えて、大半のムーブに関しては責められた物ではないとは思う。

ただ、そうは言っても、宗冬と実玖の過去の話に関しての元凶は残念ながら柊佳としか言いようがないとは思う。

 

先程、実玖はわかりにくいと言ったが、全部が分かりにくいわけではなく、スヴェとか柊佳が気を使った後とかの異様な機嫌の良さとか、わかりやすい所はわかりやすいのである。

ただ奥深くの所が見えないというか、隠しているというか…

 

 

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スヴェが演劇部において”雪の客”の演劇をやるように言われてから、事態は進んでいく。

そんでもって、過去の事が分かっていくわけだが…

宗冬は柊佳にフラれたあと、実玖と2週間くらいだけ付き合っていた事があり、そこで唯一のデートが『雪の客』の映画だったとかなんとかで。

なんともまぁ不器用というかなんというか…未熟感あふれるエピソードである。

「俺たちって……付き合っている意味があるのかな?」はまぁ最低な言葉というか、今なら分かるのに…って言われても流石に主人公の株が下がる。

 

というか、この作品基本的に主人公である宗冬の株が上がらないのが困る所で、率直に言って無能主人公に分類されるだろう

他ヒロインを活かす事と、主人公の影が薄くなるというのは割とトレードオフ的な所がある以上、仕方ないとは思うのだが、『アオナツ』はそのへんの塩梅が最低限これよりはよかったように思える。(実際の所もう一度プレイしているわけではないので、あくまでも印象としてだが)

 

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そんでもって、実玖にとって姉である柊佳に宗冬を取られることは耐えられないというのが、他ルートとの違いというか、人間が違うことによっての違いというか。

ここにも出てくる通り、スヴェか香子なら良いという所はこれまでのルートでも明確に示されていたわけで。

だからこそ柊佳だけはダメというのは良い対比になるというか、ルート毎で見えてくる面が違う感じがあって、構成としては良い。(やっぱりこれ香子→スヴェ→実玖のルート固定した方がきれいに終われるとは思うけど)

しかし、映画を見るとか云々で的確に地雷を踏んでいく香子は面白かった。実玖からしたら何も面白くないのだが。

とにかくこのルート、基本的に悪気がない感じで誰かしらの心を抉っていくことが多い。

 

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広中はどのルートでも相談に乗ってくれているし、ヒントになるようなことも言ってはいるのだが、筆者としては最終的に広中の必要性には割と疑問を感じる結果というか、いまいち必要性に対しての説得力を見せられなかった気がする。

そういった面の書き方においては、やはり『アオナツライン』の千尋の書き方がいかに絶妙だったのかというのを嫌にでも理解させられる。

なんというか、日常に溶け込んでいる上であの三人じゃないと絶対にダメ感が出せていた。

この『ユキイロサイン』は”3人で有る必要性”という所の説得力が、結果的には不足してしまった印象がある。

『アオナツ』も『ユキイロ』も3人だった頃の話というのはそれほど多いわけではない。

ただ、『アオナツ』は幼少期の話にかなりの時間を割いて、関係性になっていた過程を出した上に、現在の時系列でも千尋の有能さ、ヒロイン感が共通の時点からありありと感じられた所と比較すると、『ユキイロ』にはそういう要素は残念ながらなかったとしか言えない。

だからこそ、最終盤の文句に繋がっていくのだが…(

 

しかし、広中から香子とスヴェは過去の話を聞くわけで、ここで色々とはっきりする所もあるのだが、地雷を踏んでいた事に気づく香子とかが本当に好き。

たぶん「あああぁあぁあ」とか言っている実羽が好きなせいでもあるんだが…w

 

別れないと好きであった事に気づけなかったという二人は、まぁ未熟感を象徴する描写というか。

実玖も割と普通にしてられているんだが、一番根深い問題感はあった。

 

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んでもって、やっぱり弓田結はこの作品の良心である。

表面上一番ひん曲がってそうで、一番この作品の中でまっすぐに近いの結なんじゃねえの?レベルで良心。

コイツが悪いことをしたのなんて初回の登場以外ほぼない、ちょろい、コイツがガス抜きでしかなかった。弓田結を攻略したい。

 

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この作品、割と主人公の怪我云々に頼りすぎた感じが出たのは2/3で何かしら宗冬が怪我しているせいもあると思うの。(重症と軽症なのでぜんぜん違うと言えばぜんぜん違うのだが)

結局面倒くさいヒロインを置きまくっていることから、そういう事象がないと転が作りにくいのは分かるし、怪我の程度も違うんだから違うんだけど、やっぱり系統としてはそんなに変わらない感じになるし。

しかし、柊佳さんここから基本的に余計なことしかしないので、割とヘイトが向く。

というか本人に悪気はないし、仕方ない所はあるのだが、この人の性格が単純に問題なので仕方はない。仕方はないんだが、ここから明確に実玖で挽回してくれないとちょっとしんどいぞと思ったのは内緒だし、最終的に挽回しきれなかったというのが現実である。

当人は反省しているし、これ以上どうすればいいんだと言われればそれはそれで困るのだが、にしても余計な事しかしないし、誰が悪いということでもないよねとは今回の場合言えないので(お前が海外に行かなければそもそもこうはなってねえんだよなあ…)結果的に割と配慮されていてもヘイト向けるなら誰?ってなれば割と一択で柊佳に筆者的にはなってしまった。

 

まぁ、余計だったのは最後の喧嘩だったのかもしれない。

いや、あれでも宗冬が来ないのはバッテリーが上がってステップ云々とか言ってるし、配慮はされていたと思うのだが。

それでも柊佳がキレれる立場にあるのか?という所に関して、このルートではちゃんときれいに行く所を柊佳に全部潰してもらって主人公の見せ場をなんとか捻出しようとした感じとどうも感じてしまう。

正直柊佳がこの場にいなければ上手いこと普通に行っただろというか。

結局、過去の話は柊佳が絡んでいることは間違いないのだが、それにしても宗冬と実玖の問題であったはずである。

そこに対しての柊佳の茶々入れの頻度が多すぎるし、そもそもお前が海外行かなきゃこうはなってねえんだぞっていう元凶とも言える存在がそういうムーブされても、結局ストレス要因にしかならないというか。

結果、二人の問題感が薄れたし、それによって宗冬の活躍ポイントも削がれた気がするんだけど、どう?

 

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実際、原動力が柊佳である必要性はあったと思うし、別に最後の喧嘩以外ならまだ許せた気がするんだけど、お前にキレられてもなあ…ってなる喧嘩だけは別にいらなかったと思うし、ここに時間を割くならもっとこの後実玖とイチャイチャさせてくれないと。

 

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別に展開として悪いとは言わんし、話としてはダメとも言わないし、告白シーンは良かったと思う。

好きからの「俺たち……付き合ってみる?」はベタだがこれで良いし、変に捻る必要性もない。だからこれは良かった。

 

話としてもきれいにまとまっているとは思うし、ダメとは言わんのだが、そういう意味でいうと惜しいというか、もっと出来たんじゃないの?というポイントがこの作品には多い。

頑張ってると思うし、全然駄作じゃないし、良作だと思うんだけど、思うんだけど…

だからこそ、なんというか首を捻る所が目立つというか…それが実玖ルートになるとより顕著になるというか…

付き合うまでの過程を割と遠回りさせないといけないのは間違いないし、そういうヒロインであることは分かるんだけど、そのやり方にもうちょっと何かが欲しかったというのが贅沢な要求である。

 

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ここから実玖はそれはもうデレッデレになるし、凄いスピードで濡れ場を消化していく。

めちゃくちゃかわいいし、破壊力としてはかなりのモノである。

ここに猫村を置いた事で、ちょっと明るい方向に行った実玖を不自由なく行えるというのもいい方向に働いたのだろう(というかこういう低音のキャラのイメージないし)

ここからの濡れ場やらデートやらはめちゃくちゃ良い。というか実玖のキャラクター性で一生ゴリ押し出来てしまう奴。

柊佳の出頭せよLINEは非常に笑いどころ。笑いどころだけにやっぱり過程でも上手く柊佳を使ってあげてほしかった、ヘイトを向けられるようなキャラじゃないよ。

めちゃくちゃスヴェと広中にプレッシャーをかけるし、「ぜーったい手を離さないで」とか言い出すし、なんだこのヒロイン。センターヒロインにふさわしいムーブだったし、割とここで今までを許しちゃえる所もなくはなかった。

とにかく実玖は非常に可愛く仕上がっていた、すごくよかった。

 

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弓田結、いつまでも良心。こんなにわかりやすい奴ほかにいないからもう(

 

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実玖のキャラクター性の破壊力が本当に高かったからこそ、『広中の下りいる?』となってしまったのが残念ながら現実である。

これは、結局の所作品としての広中の必要性というか、『不可欠性』を十分に提示できなかった事に尽きると思う。

結局の所、広中サイドの心情系統もこのルートに入る以外あまり出されていないし、地の文で”広中は宗冬についていっただけ”とか言われても実感が湧かないモノである。

 

ここから、基本的に広中の事しかやらないし、作品として一番盛り上げていると思うのだが、

そもそも広中への愛着をもたせるシーンが少ないし、

三人である必要性を全然提示できてないし、

結局『アオナツ』のテンプレに乗っけただけ感が最後の最後に一番出るという最悪の展開になったのかもしれない。

広中の下りをどうしてもやりたいのであれば、ここまで『アオナツ』と設定を近づけているのであれば開き直って幼少期の広中が宗冬についていっていただけという描写をどこかで行っておく必要性があったのではないだろうか。

結局の所、宗冬にとって広中は超えられない存在であった訳だが、広中からすればそうではなかったという所の説得力とかが基本的に欠如しているし、そもそも男性陣の影が作品を通して薄い。

別にエロゲとして男性陣の影が薄い事は悪いことではないし、実際女サイドを書くべきである。

 

ただ、最後に男まで回収するのであれば、ある程度男側に必要性と愛着を抱かせないと「もっとヒロインとのイチャイチャを見せて」以外の感想が出てこないのである。

『アオナツライン』においての千尋の回収の必然性は、千尋当人のムーブ、家族との関係、過去の描写等、多くのものが積み重なってようやく許されるモノである。

基本的にエロゲというのは女との云々を描くものであって、そっちがしっかりしている上に、その上で男を触る必要性を生み出し、その上でその男キャラに愛着を持たせないと納得出来るものにはならないという事である。

 

しかも、付き合ってからの実玖のキャラクター性がとにかくかわいいをゴリ押しすればどうとでもなるチートみたいなキャラクター性にしたんだったら使い切らないと。

何最後若干元に戻して終わらせてるんだよ。勿体ない、しかもED後に話一切ないんだぜ?もっとイチャイチャ見せろよ、何三人でチャンチャンしてんだよ。

勿体ないだろそれは、『9ゆきいろ』を見習え。

ここまでチートヒロインを作っておいて使い切らないとか愚行も良い所。

せめて広中に対しての回収の必然性を感じられればよかったけど…悪いけど全然なかったよ、筆者は。

 

実玖の声優は猫村ゆき。

前述の通り、こういうトーンの低いキャラクターというイメージはなかったのだが、割と頑張れたというか、使っていける引き出しになり得るのではないだろうか。

猫村は割とレンジが広そうで狭く、外すと割と暴投する可能性もあるので、そこがちょっと怖いのだが、基本的にはいい演技してくれるし、この作品においてはスヴェルートのキレとかもそうだし、ポイントポイント重要な役回りをきっちりとやってくれた。

デレデレの時のデレデレ感をしっかりと出している上で、ギリギリキャラ崩壊するかしないかくらいの塩梅でやってくれたし、猫村の仕事としては素晴らしいものであった。

 

 

『ユキイロサイン』という作品に関して、悪い作品だったと言うような事はない。

うみこの原画は相変わらず美しいし、雰囲気は素晴らしいし、話としてもまとまっている。

 

だからこそ、非常に惜しい点が多く散見された上に目に付く。

それは話の展開であったりもそうだが、全体としては『説得力』とか『必要性』とか『必然性』とかの不足である。

これは、話としての書き方や、描写の仕方という所に関しての欠如といえるポイントだろう。

話としてきれいなのだが、そこに説得力がないというか。なんでそうなったのか?という所に関して、「なるほど」と思わせる所がちょっと少なかったんじゃないだろうか。

 

別に全然ダメってわけじゃないし、普通に良作だし、良い声優使ってるし、魅力的なヒロインも揃ってるし…でもなんか足りない。

まぁこれは『アオナツライン』の片割れが『アオナツライン』みたいな物をもう一回作るって時点で『アオナツライン』を超えられる可能性っていうのはなかった訳で(大地こねこがやるならともかく)仕方がないと言えば仕方がない。

 

テンプレートに則って良い感じに仕上げてはいるのだが、もうちょっと洗練できる所はあったようにも思えてしまう。

特に、広中周辺に関してはもうちょっとどうにかしてあげないと、広中が可哀想な気もする。

 

重ねて申し上げておくが、あくまで全体としては良作に分類されるべき作品である。

『アオナツライン』の形式にしっかりとハメ込んだとしてもそれが絶対に良作になるかと言われればそれではないし、それをちゃんと良い雰囲気と、魅力的であり面倒くさいヒロイン達、全ヒロインがどのルートでもちゃんと関わってくる単独ライターの強み(まぁアオナツラインは複数ライターだったので単独ライターだからというわけではないが)、堅実な声優選択、OPEDのクオリティ等、良いポイントは非常に多く見られる。

特にスヴェルートのEDである、『BEST PLOT』は筆者的には非常に好みの楽曲である。

『アオナツライン』のようなヒロイン歌唱楽曲も良いものだが、『ユキイロサイン』のようなちゃんとした歌手の歌唱楽曲もこれまたやっぱり良いものである。

そういう所が丁寧に行われているからこそ、そうではない所が気になるというか、そういう感じなのだ。

あとひと押しと、丁寧さがあれば『アオナツライン』と肩を並べられる作品にもなり得る要素はあったように思うので、やっぱり惜しい。

ただ、Wonder Foolとしてこの系譜をやっていく…⁉という場合は止めはしないし、ある意味四季シリーズみたいにしちゃてもWonder Fool的には成功に近い体験を続けられると思う(まぁその場合はもうちょっと『アオナツライン』テンプレから外していく必要性があるだろうから、上手くいくとは限らないが)

 

…皆言っているがどう考えても濡れ場のBGMがおかしい。

誰なんだアレでゴーサインを出したアホは。100人が聞いて100人がおかしいって言うだろあれは。

 

『ユキイロサイン』は『アオナツライン』の系譜に足りる作品にはなったとは思うが、改めて『アオナツライン』の描写の適切さを感じさせる作品でもある事は否定できないだろう。

間違いなく良作の部類に入れるべきだが、『アオナツライン』の良さを受け継げた部分が少なくなかっただけに、あとひと押しという所が目についてしまった。

惜しいと思うと同時に、やっぱり前作が存在する作品のハードルというのは幾らメインピースが一つ抜けている作品でも必然的に上がってしまうんだなと感じる所だ。

 

以上。