声オタおにじくんの声学審問H!

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過激派で有名な(?)おにじさんが、声優の事を語ったり。

声オタおにじくんの声学審問H!


おすすめ記事

作者様からダイマされて全巻購入した『 #友達の妹が俺にだけウザい 7巻』レビュー・感想。

ちゃろ~、おにじです(激寒)

 

今回は、うちのブログで数少ないシリーズとして続いているモノ。

いもウザの感想記事である。

 

うちのブログ…声優名鑑シリーズと、

oniji.hatenablog.com

 

エロゲヘッドライン(エロゲダイレクト)と、

oniji.hatenablog.com

 

このいもウザ感想記事しかないのである。

それ以外基本的に単発記事になっているという、よくこのブログ1年以上週二更新出来てるよな…(

 

という訳で、今回も感想を書いていこうと思う。

f:id:oniji:20210320173711p:plain

(いつもの)前置き

もうい つ も の前置きなので、聞き飽きた感じになりつつあるが、一応この記事から見始めたよ!という方もいるかもしれないので、ちょっとだけ前置きを書く。

 

 

筆者はにわかエロゲーマーでしで、去年の3月頃にシナリオが全員ラノベライターの『神様のような君へ』(CUBE / 2020)をプレイ。

 

この中で霧香ルートが個人的に凄く良い出来で、それを書いていたのがこの『友達の妹が俺にだけウザい』の三河ごーすと先生であったわけである。(このタイミングで明羽杏子と三河ごーすとを同時にビビッと来たらしい。いや、明羽はもうちょっと前から知ってたけど)

oniji.hatenablog.com

oniji.hatenablog.com

 

 

これは一回ラノベも買ってみるか、とりあえず一巻買って様子見るかなあ~と思い、その旨をツイートしたら、

 

作者様である三河ごーすと先生にダイマされて、全巻(当時は4巻まで)を購入したというお話。

 

この下りをやったのがもう一年前になるらしい、もうそんなに時間経ったの…?

というか『神様のような君へ』一年前かよ、そりゃ次回作も出るか…(

 

この下りの結果、毎度筆者が読んだ後に感想記事を上げるというのが通例となっており、三河ごーすと先生にバリバリ見られているというお話である。

 

しかし、アレ一年前でそこから3巻も新巻が出てるのって普通に凄いな…

 

 

アニメ化決定!

めでたくアニメ化が決定。

 速報記事として当ブログでも紹介したが、大変めでたい事である。

oniji.hatenablog.com

筆者がラノベをアニメ化前に購入して、アニメ化の告知を見たのってめちゃくちゃレアな気がする。(俺ツイとか、デート・ア・ライブとか…)

 

まぁこの作品はアニメ化するだろうと思っていた。

特装版が出まくるし、ドラマCDキャスティングに関しても、アニメ化するとして現実的なメンツではないかなとか思っていたし。

推され方にも、原作の面白さ的にも非常に妥当なアニメ化と言えると思う。

まぁアニメ化に関しては上記の記事で言っているのでご参照を。

この記事でも後では言うかもしれないけど。

 

という事で前置き長くなったけど感想を。

 

 

雑感

この7巻って、簡単に言ってしまえば今後の為の準備の巻だったと思う。

箸休め的なポジションなんだと思うのだが、それでこの展開の多さ、テンポの良さ、今後に効いてきそうな要素、面白さをしっかりと出せているのが素晴らしいと思う。

 

 

かき回しに来たぞ、母親が。

今回から、彩羽、真白の母である乙羽(おとは)と海月(みづき)が登場。(まぁ乙羽は前から出てたけど本格的な登場はここという事で)

この二人の出現によって、更に展開していきそうな感じである。

 

「ところで大星くん。娘とはどこまでいったのかしら」

「いつの間にそんな会話になってたんですか」

p12

 

突然現れた二人だが、もうグイグイ主人公の明照に来る訳で。

ここで効率主義で基本的に『5階同盟』のプロデューサーであり、人の上に学生の割に立っている形の明照に対して、”勝てない存在”、”人生経験が上の人間”が現れるのもポイントだ。

 

まぁカナリアとかもそのポジションと言えばそのポジションなのだが、今回の二人は母親である上にめちゃくちゃエリート系統である事を考えると、その立ち位置である感じが強い。

 

天地堂社長と、ブロードウェイとか出る大女優という要素もそれを高めており、かき回し要因としては十分すぎるものである。

この二人のヤバさがこの巻では十二分にわかるわけだが…

 

最初から分かる乙羽のヤバさというのは、その圧であろう。

元々から読者も彼女が彩羽に対してエンタメ系統を制限しており、天地堂の社長である事は分かっているわけだが。

言葉言葉に圧を感じる所があり、明照では太刀打ち出来ないぞ…という雰囲気をしっかりと文章から感じることが出来る。

ニコニコしているけど怖い女って割と怖い系でも一番怖い系統だが、まさにそこに合致するのだろうか。

意外とも言えたのが、この乙羽と彩羽の関係は決して悪いわけではなく、むしろ良い方である事。

多少のギスギスの可能性を感じていたのだが、そういう感じではないようである。

こう微妙に明かされていく情報自体が、今後に効いていきそうな感じがする訳で…

 

海月の方は、圧倒的な掴めなさが不気味というか、怖い。

カタコトで喋っているが、それが本当なのかも分からない、一々卑猥な方向で言葉を言ったりするし、その不明さが不気味である。

まぁ両方美人だし、ハイスペックだし…

 

この中、前巻から彩羽と真白の明照争奪戦がマジで開戦しているわけで、非常に状況としてカオスな形になっていると言える。

 

 

情勢的な危機感と、降りかかる難題

なんだかんだプロデューサー思考としては有能な明照

そんな中、『5階同盟』によって作られている『黒山羊』は200万ダウンロードを突破し好調。

しかし、明照はハニプラの四半期決算を見て危機感を覚える。

コンシューマーでも300万初速で複数作品が行っているのに対して、ソシャゲは『黒山羊』こそ好調だが、新作が存在しないという形に。

基本的に近年始まったソシャゲは1、2年で終了している事から、ソシャゲ市場事態に価値があるのか?という所がある感じになってくる事に危機感を覚え、300万ダウンロードに向けてまだまだ成長し続ける必要性があると。

その上でピンスタの茶々良等も駆使したりして伸ばしたいと考える明照。

 

この辺りは、現実でもソシャゲというのは結構頭打ち感があるので、分かる所ではある。

…まぁウマ娘プリティーダービーとか言う延期に延期を重ねたソシャゲが一瞬で200万ダウンロード突破してたけど、アレはまた違うだろうしな(

明照のプロデューサー的な思考は、いま現状の数字、黒字か赤字かという所にとどまらず、将来的な動きに関しても冷静に見れているという有能さをここでは改めて感じられる場面である。

 

 

菫(紫式部先生)の考え方の変化と絵の発注制限

「しばらくイラストの発注を抑えてほしいの」

「断る」

「秒で断らないでよぉ!」

p73

そんな中、菫がイラストの発注を抑えてほしいと言い出す。

しかしそれはいつもの菫のしょーもない理由ではなく、修学旅行の担当になった事が理由だった。

 

夏休みの一件以降、いつでも教師をやめられる状態になった菫は、逆に生徒の為に何が出来るのかとか、修学旅行も楽しんで欲しいとか考えるようになったらしい。

これは、コミケとかを経験している上で、イベント事は楽しみたい!という所もあるようで。

その結果担当にされてワンオペなのは可哀想だが、残念な所がどうしても前に出てくる菫というキャラクターにおいての大きな変化ポイントと言えるかもしれない。

 

キャラクターの濃い『5階同盟』の連中であるが、結構その考え方とかは最初からは変化しつつある。こういう所を考えると、乙馬とかの掘り下げも今後しっかりとおこなわれそうな感じはする。

 

 

明照の欠陥感と天才と凡人

また、菫と乙羽と海月のお酒の下りがある訳だが…

まぁ乙羽の大物感の強さよ、この人は腹の中で何を考えているのかという所がマジで分からんなという描写を徹底して行う上で、その怖さとはまた別に優しさ的な所も存在するという塩梅が良い感じ。

海月は海月で突っ込みまくる(ボケツッコミという意味ではなく)所があるし。

家出してるのも月ノ森社長の愛が全部こっちにむいてるからとか言い出すし。(クソデカ感情ってなんだよ)

 

「恋愛したらー、二十四時間、三百六十五日、ずーっとイチャイチャして過ごさなきゃいけないとか思ってたりしないですかー?」

………………………。

…………。

えっ。

「違うんですか?」

「なるほど、童貞ですねー」

「未経験、バージン男子、あるあるな感性。あります」

「ああああああ何だかよくわからないけど恥ずかしいことを言ってしまったことだけは何となく察したああああ!」

p143

 

こういう大の大人というポジションは、明照の欠陥をしっかりと突いてくる所もある。

カナリアもそうだが、こういう人生の先輩というポジションが指摘してくるのは普通なのだが、明照は周りの人間に恵まれているという言い方も出来るだろう。

 

乙羽の思想、考え方が非常に見えてくるのも面白いところだ。

「天才がいなくても作品は作れるし、作品という場を与えられなくても天才は孤独にいきていけるのではー?」

「一部の天才に頼る制作ほど足元の怪しいビジネスはないと思いますけどねー。そのやり方だと、計画が破綻させられ、成長が妨げられる日がいつか来る。……うふふ。実はもう、来ていたりして」

p147,148抜粋

 今回の話の中心的な要素として、天才だけでしていくこと自体が正しいのか?という『5階同盟』の根本にも関わってくる所がポイントである。

乙羽は凡人でもいっぱいいればいい作品は作れる的な考えであり、それでこそ天地堂の社長という言い方も出来るだろう。言ってみれば間違っていないわけである。

さらに言えば……と、これは後にちょっと取っておこうかな。

 

実際問題、ソシャゲの絵が全部同じ人ってかなり厳しそうだけどどうなんだろうか?

そして、反発とかってどれくらいのものなんだろうか?

…まぁこれがエロゲだと、原画が増えたり、変わったりすることって割と大きな事で、反響反発が結構大きくなったりする。

真白が二人体勢の話をするわけだが、この二人体勢ってのは結構エロゲとかに限らず多い気もする。

ゆずのむりりん・こぶいちとか、オーガストべっかんこう・夏野イオとか。

オーガストは夏野イオは後に入っていたはずだし。

ソシャゲって絵師統一されてるのって、たまにあるけど、最近は3Dモデル使用される場合も多いから、多少負担減ってたりするんだろうか?(でもイベント絵とか大変そうだしな)

 

…しかし、この明照ってやつは真白に無自覚主人公ムーブしてるんだよな、確かに明照の言う通り乙馬も主人公ポジ感あるんだけど、無駄が多い上に無自覚で、それでいて有能ではあるお前の方が主人公だよ、お前のことそんな好きじゃないけど。

 

 

「やっぱりアタシ、今月もイラスト作業をやることにしたわ」

「……え?」

「発注をストップしなくていい、って言ったのよ。紫式部先生にドーンと任せなさい!」

p170

そんな中、菫が描くと言い出すわけだが。

これは真白(なまこ先生)とのやりとりによって菫が決断する事であるが…

実際、酒飲みまくっている菫にとって、その時間を削れば描ける事は描けるだろうという話だが。

 

もちろんこの点に関しては明照は心配をした上で、菫の動きを確認するわけだが、その上で大丈夫だろうと判断するわけである。

…しかし音井さん、しれっと登場していつもの音井さんを披露していくの笑うな。

 

明照はちゃんと心配しているし、確認した上でゴーサインを出すわけだから、判断としては間違っていないと思うのだが。

しかし、菫がかなりまともになってきた感じがある。5階同盟の中で大人なの菫なのだが、ある意味扱いが一番下まであったので、この進歩は感じるべきである。

 

 

茶々良とかいういろんな意味でちょうど良い奴

ここで茶々良のピンスタが理不尽に大炎上するという展開がある訳だが、とにかくこの茶々良という存在が色々とちょうど良い。

 

展開的に一旦飛ばしたのだが、この前にカラオケに登場する下りがある。(ストーカーだわ)

ここにおいても茶々良は両親から愛されているっぽいし、弟との関係がなんだかんだ良い感じなのもこれまでに分かっていたりと、彩羽にとっての理想とも言える関係性に見える訳で、こういう意味でも茶々良という存在は彩羽と一緒にいさせる事に意味がありそうな訳で。

 

今回の茶々良の炎上も非常に理不尽なもの(タイアップしたミネラルウォーターの会社のCMやっているタレントが不倫したことによる風評被害)な訳だが、有名ピンスタグラマーとしての宿命というか、有名になるという事はどういう事なのか?という所を実演してくれる存在と言える。

 

まぁこの炎上で乙馬使って物理的に炎上を収めていくの怖すぎるんだけどな、なんなんだこのチート集団。

また茶々良が素直に「私、女だけど」とかを信用してるのも面白い。

なんというか素直すぎる子って感じがする。

 

コイツもコイツでヤバい奴ではあるのが、ヤバい度としては相対的に低くなるのが面白いところ。

この茶々良というキャラも今後の展開に置いて非常に必要なポジションであることは今回出てきた情報や、茶々良の身に起こる事柄によって示されている。

 

 

ゴーサイン判断の難しさ・無自覚副作用再び発生中!

そんなこんなで新規イベントの絵が紫式部先生から到着した訳だが、その日菫が学校に来ない上に、消息が分からないと聞かされる明照。

無理をさせていたのは重々承知であった明照は一秒でも早く菫の元に行くことを考えるわけだが、そこに現れるザ・委員長(ポンコツではあるが)である翠である。

 

明照がサボろうとしているという方向で言い出すわけだが、これは傍から見れば正論である。

ただ、ここで止められるわけにはいかない明照。これはプロデューサーとしては正しい判断であろう。

「翠ッ!」

「ひゃい⁉」

部長、をつける心の余裕など、一刻を争う俺にはなかった。

彼女の肩を強くつかんで、まっすぐに、真剣に、ありったけの本気を込めた目で、彼女の目を見て。

「お前のためでもあるんだ。頼む…。行かせてくれ!」

「わ、私の……ため?え、ええっ?ちょっと、意味わかんな……か、顔が、近っ……」

からしてみたら何がなんだかワケがわからないだろう。

だけど俺にできるのは、ただただ真剣に想いを伝えることのみ。

「頼む。何も見なかったことにして、俺を行かせてくれ」

「は、はい……わかりました」

訴えが伝わったのか、肩から力を抜いて、翠はこくんとうなずいた。

なんで敬語だ?と気にしてる余裕はない。

「ありがとう、翠部長」

俺はそう言い残して踵を返し、昇降口を飛び出した。

p216

いや、間違ってないんだよ。明照は。

この状況で翠に菫がヤバいかもしれないとか言わないべきなのは正しい判断だと思うし。

でもなんでそういう言い方をするのか。

この主人公、クソ童貞である事を50ページ前くらいで露呈してましたよね??

何、それはもう翠落としに行ってるじゃん。お前無自覚にまた面倒な事してるけど大丈夫?ほ~んとラノベ主人公だなお前、嫌いだわ~wwww

 

”彼女の肩を強くつかんで、まっすぐに、真剣に、ありったけの本気を込めた目で、彼女の目を見て。”

 

いや~、わざとやってるまであるわ本当に。コイツを表す言葉って多分”狂人”なんだよな。

こう目的に対しての手段を選ばなさすぎる所がある。その結果、より多くの非効率を生み出しまくってるんだが、本当に有能なのか無能なのかわからないのだが、

少なくともプロデューサーとしては有能の部類だが、言うて学生なので人生経験的な所が不足してる結果、こういう歪な感じになるんだろうなあとか。(筆者も学生なので人生経験はありませんので、こういう言い方をすると明照に怒られそうだが)

明照、全然人間味がなさそうで、一番人間味があるし、一番未熟なんじゃないかなあとか。

 

そんなこんなで、菫は腰をヤっていたという結論なのだが。

ここにおいての難しさというのは、菫は『5階同盟』の為に頑張った訳であり、これは善意での行動なわけである。

明照が責任を感じるのも分かるわけだが、明照はきちんと菫の行動を確認した上で止めなかったわけであり、上に立つ者としては最低限の行動は行っていたとは言えるはずである。

 

とは言え、状況は理解していた明照にとっては自分が許せないのも分かるわけで。

ここでは『やりがい搾取』という言葉が出てくるわけだが、クリエイターを制御する事の難しさを非常に感じる一幕と言えるだろう。

 

しかし、”本人のやりたいという気持ちを無限に許すこと”がやりたい搾取と定義すると、管理するサイドの負担がデカすぎない?と思ったりはする。

当人の限界が不明な上、コンテンツとして供給し続けるべきものがある場合は、歩みを止めるわけにも行かないわけだし。

それでどこが限界かも分からない人間をどう上手く回すのか?というのは管理サイドは割と無理ゲーなんじゃない?と思ったり。

まあだからこそ複数人で回すことがそのリスク軽減に繋がったりはするんだろうけど。

 

どちらにしても、この案件というのは、明照が考えるほどは明照が悪いとは中々思いにくい所ではある。

ただ、上に立つ者として責任を感じるべきでもあるので、明照に謝る必要性はないと言うつもりもないわけだが。

なんにせよ、ゴーサインを出すという行為は非常に難しいと感じるわけである。

止めるべき時に止めてあげる事も必要な技能なのだろうなとは、でもそれってクソムズそう。

 

 

二人の母親による対照的な考えと、明照の中の変化・矛盾

明照も分かってはいた『5階同盟』における問題ともいえる今回の案件。

実際問題、この人数でやっていく以上は仕方がない、しかし取り返しのつかない事になり得る問題であった。

 

「ふっふっふ。彩羽ちゃんだと思いました?……残念☆」

「は?何言ってんだ。どっからどう聞いても彩羽だろ」

「いいえ、母です」

「⁉」

p231

はいこの瞬間にアニメ化する際に乙羽の声優の選出難度が一気に上昇しました。お疲れ様でした。

鈴代紗弓の彩羽の声が出来る声優をちゃんと持ってこい!!!いいな!!!!

 

…というのは置いておいて、幾ら親子だからってそんな声合わせられんでしょ。

この人の末恐ろしさを更に際立てるわけだが、彩羽の才能自体も母譲りだったりするのだろうか?

 

「軽視したつもりはありませんよー。ただ、自分を唯一無二の才能ある人間と勘違いし、凡人を軽視する人間を排除しただけ。……と、そう聞けば明照君の印象も変わるかしらー?」

 

「百の凡人の力は一の天才を凌駕する――少なくとも私はそう信じて、その芯をぶらさぬ意思決定を続けてきたつもりでしてー。あなたもいつか、それを理解せざるを得ない日がくる。と。私はそう思っておりましたー」

p234

別に乙羽の言うことは間違っていないし、実際問題大半の企業形態において、複数の人間で回す事が普通であろう。

その方が何かが起きた場合の対処もしやすいし。

天才に任せるというのは、それだけリスキーなことである事は当初から分かりきっている事である。

 

ただ、乙羽の言い方から考えて、以前は天才に任せようとした、または天才として任された可能性というのがあるのかもしれない。

彩羽の声を真似できるような人間は、ある意味で彩羽のような演技力を持っている可能性はある訳で。

 

乙羽には乙羽の失敗が存在した上での考えの可能性もありそうである。

とりあえず、乙羽の考え方としては非常に現実的なやり方である事は間違いないだろう。

 

…まぁその価値観を彩羽とかにもある種押し付けているのはまた別問題だろうが。

 

 

「おはジュール。いい朝、元気してます」

「は、はあ。えっと、なんの用ですか……?」

「大切な男と女、お付き合いの話、したい。しにきました」

終わった。

p253

その一方で海月は車を飛ばして、明照をどこかに連れて行く。

前日の夜に真白とこれからの案を出し合った結果、二人で寝落ちしていたこともあり、猛烈に勘違いをする明照だが、また違う意味で衝撃を食らうことになる。

 

「ご注文はイタリアンハンバーグのセットが一点。以上でよろしいでしょうか?」

 

「海月さん……なんですか?」

「ミュージカル女優をしながら副業でファミレスバイトをしております月ノ森海月です。以後お見知りおきください」

 

「フフ、ワタシ、演技力100点、できました。できてますか?」

p261,262抜粋

いや、そんな所まで覚えている読者もそんなにいないだろ。

月ノ森社長と良い感じになっていた(というか浮気してた)あのウェイトレス。

調べたら、一巻からもう出てたっていう。

 

「《5階同盟》はやはり素晴らしいコミュニティのようだ。フフッ」

上機嫌にそう行って、月ノ森社長はウインクをした。

ちなみにそのウインクは俺に対してではなく、こちらをチラチラ見ているウェイトレスさんに対してだ。

ナイスミドルの目配せに赤面し彼女はそそくさと厨房に引っ込んでしまう。

俺はあきれて言う。

「まだ狙ってるんですか、あの人のこと」

「あと1回だ」

「……社長逮捕、ってのだけは勘弁ですよ」

「はっはっは」

いや笑いごとじゃないから。

第1巻 p284

まぁここから色々あって明らかに関係が進んでいるとかいう話はあった訳だが、こんな所まで伏線で、しかもそれを第一巻から張ってるとかおかしいでしょ三河ごーすと。

こんなの分かるかい!!!!

「えっ、あ~~~~、なんかおったな!おったけど!!おったけどそこ????」

って流石になったわ。伏線大好きやけど。

 

しかし、不倫の相手が嫁(当人は気づいてない)とかヤバすぎるんだよなあ…

この海月って人、もう何が本当なのか分からない。恐ろしい女。

まぁこんな母を持った真白も、売れっ子作家であることを隠しているわけだが、そんなレベルじゃないやつだろと。

いや~、真白もどんどん恐ろしい女になっていくのだろうか?こっわ(

束縛したくないけど浮気はされたくないというワガママを海月はめちゃくちゃな方法で通している。

しかし、そのやり方をすることでお互いが幸せという…(月ノ森社長は気づいていないのだが)

 

「世の中、矛盾たくさんあります。ぶつかり合う思想、価値観あります。でも「大勢の女性と付き合いたい夫」と「ワタシだけを見てほしい妻 』、そんな矛盾さえ、両立可能、可能性あります。——ワガママ、通すの大事です」

 

「明照君、本当にやりたいこと、心、素直に従っていい。やりたくないこと、我慢いらない」

「本当にやりたいこと……ですか……」

p268,269 抜粋

しかし、こんな情報爆弾爆発させてまで、明照にアドバイスを送りたかったというのは、早く恋をして欲しいとか言う所以外にもなんか無いと無理じゃない?とかは思いつつ。

 

効率という所を基本的に求める明照だが、ここで改めて5階同盟のメンツに対しての仲間意識というものを再確認できるタイミングだったようにも思える。

 

この二人の母親、言うなれば真逆の人間とも言える。

エンタメというモノへの捉え方が真逆であると。

だからこそ、こういう時のアドバイスも真逆と言える所がある。

この二人はアドバイスどおりの方法で成功してきたわけで、どちらかが正解で、どちらかが不正解ということではないわけである。

まぁだからこそ難しいのだが。

 

また、一種面白さを感じるのは、この二人のアドバイスを明照は海月の方を選んで進んでいくわけだが、これは明照の中の一種の矛盾を端的に表したところと言えるかもしれない。

明照という人間は、とにかく非効率な事を削ぎ落とす人間だった。

ここに『ウザいは可愛い』等の事がわかり始め、変わりつつあるとは言え、それでもまだ効率厨である事に変わりはないだろう。

そういう所を考えれば、明照という人間は、乙羽のアドバイスを聞くべきはずなのである。

 

明照は狂人ではないかという話を前述したが、彼は効率を求める割に、その効率の為に非常に不効率な事をする矛盾を持った人間である。

そういう所を改めて感じる場面と言える。

 

効率が生むものも大きいのは乙羽が示している。

しかし明照は学生としてあまりにも無駄を極端に排除していた所もあり危うさを感じるところもあるのだが、それはある程度是正されつつあるのかもしれない。

まぁそれが本当に良い事なのかは分からないという…(まぁ筆者の好き嫌いで言えば、そっちに言ってくれたほうが好きにはなれそうだが)


地味に一番変わりつつあるのは明照であり、彼の考えが変わることがどのように今後の活動と、ラブコメ的な所に向かうのか。

まだまだクリエイター脳が抜けない所ではあるが、『ウザイは可愛い』を自覚した時のような大きな前進が近づいている予感もある。

 

【大切なお知らせ】日頃より、応援してくださっている皆様へ。

『黒き仔山羊の鳴く夜に』の追加コンテンツの更新につきまして、しばらくの間、お休みさせていただくことになりました。

新シナリオ、新キャラの実装を心待ちにしていただいていることは認識しておりまして、運営としても一刻も早く新しい展開をお見せしたいのですが、このままのペースで制作していく場合、満足いただけるクオリティを維持することが難しいと判断いたしました。

十二月頃の更新再開を目指し、しっかりと足元を固めた上で、納得のいく作品作りをしていくつもりです。

皆様にはご心配をおかけして大変申し訳ありませんが、引き続き 『黒き仔山羊の鳴く夜に』および《5階同盟》を応援してただけますと幸いです。

《5階同盟》代表・AKI

 

この場面での明照の決断というのは非常に”アキらしい決断”なのだが、その”アキらしい決断”というのは、明照の変わってきた事を示していたり、元々から彼の信条と行動に矛盾が存在すること等を結構一気に再提示してきた感じがあって、好き。

 

 

母親がかき回しそう感

5階同盟としても大きな決断を行い、その時間を有る意味で有効に使おうとしている明照。

一度離れて様々なものを見ることによって、また新たなアイデアが生まれるというのはコレに限ったことではない。

 

「あなたはそういう価値観でしょうね。一切の折り合いをつけず、ワガママなまま成功した、あなたは」

p296

この母親二人、真逆である事を再度示し、その関係性が決して良いものではないという事を示すわけだが、やはり乙羽に関しては何かしらあって現在の価値観を形成している事をここではっきりと伏線として置いている。

乙羽の価値観の形成という所は、本作において非常にキーポイントとなってきそうなのは明らかであろう。

 

この後、お互いの親が違う方の子供とLIMEを交換して、今回の話はほぼほぼ終わりを迎えるわけだが。

彩羽が演技で自分を出し切れていないのはバレるのが怖いからである。

そんでもって、この月ノ森の両親は彩羽に関して非常に感づいている訳である。(月ノ森社長は一人である事を見抜いていたし、海月は彩羽である事を見抜いた)

 

いつもの社長定例で明照は将来的なコンシューマー版への意欲を示している。

元より、これだけの小規模、少人数での開発という所を考えれば、もちろん永遠に新しいものを作らなければならないソシャゲよりもCSの方が向いているわけで。

新たな野望という所も見えて終わっていく。

 

 

総評

(いやここまでなっが)

今回はヒロイン二人の母親が登場した訳だが、

ブコメという所は一歩も進まなかったが、それでも非常に面白い話であったように思う。

 

ここは、両母親のカラーが対象的に違う事、そして明照が元より割と矛盾を持っている所が効いているように思える。

明照の”効率的”という考えに合致しているはずが矛盾する乙羽と、明照の考えとは違うはずが合致する所がある海月。
お互いの母が相手の娘の後ろにつく状況といい、非常に複雑に、それでいてカラーが明白な所もあり、面白くなりそうな要素が更に増加したのではないだろうか?(まとめられれば)
 
また今巻では乙羽が元々からこういう人間ではなかったという所がほろめかされたり、彩羽の父とか、明照の両親とか、語られなかった所にちょっとだけ触れたり、特殊メイクの下りで”心当たりが一人いる”とか言ったりと、今後の展開において非常に重要となってきそうな要素が散りばめられていた。
 
今巻でも非常に明照に対して影響を与えた乙羽と海月。
大企業のトップと、個人の力でトップに成り上がったという二人の母親の考えの違いがアドバイスに明確に現れているのが、非常に面白く、対照的な存在と言え、この二人が明照の考えを買えていく大きな要因になることはまぁ間違いないだろう。ラブコメとしても、主人公の考え方にしても非常に大きな役割を果たすことになりそうだ。
 
しかし、海月でも気づく声優が彩羽であるという事。
声を真似できる乙羽が本当に気づいていないのだろうか?
気づいている上で泳がせている可能性のほうが高い気もする。
二人の関係は割と良好である事を考えると、乙羽はどういう考えなのかが…
とにかく、この乙羽という存在は今後のキーになることは間違いない。
過去がある事を示唆した時点で、ある種の勝負的なことにはなるかもしれないが、ある程度認められるエンドになりそうな気もするが…どうだろうか?
 
そして、修学旅行。
ここにきて翠まで参戦してきて、よりややこしくなりそうだが、これは明照の自業自得でしかない。(当人は無自覚だが)
真白のターンと思いきや、割と騒がしくなりそうな予感。
 
…しかしウェイトレスまで伏線となるともうどこまで考えれば良いのか分からない。
毎回三河ごーすとの論理的な”転”には翻弄される。
ちゃんと上手いこと張って上手いこと回収するの好き。
 
 
しかし、アニメ化は既定路線だと思うのだが、この原作をどうアニメにするのか。
単純な萌えアニメでは全くない事を考えると、この原作の面白さをしっかりと投影できるのか。
結構ハイスペな人間が多い設定の上、複数の声使い分けないとダメなキャラが非常に多いことも考えると、制作陣、アニメーション会社、声優陣どれも必要な要素である。
翠とか、カナリアとか、乙羽とか(海月はとりあえず出てこないだろうからいいとして)割となんだかんだ演技力が必要であろうキャラがまだゴロゴロと…
 
ウザカワラブコメ、単純な主人公の取り合いの話であればここまで読んでいないわけで、その辺りの内容がちゃんと上手いこと踏襲され、上手いこと伏線をだして、上手いこと回収する所とか、単純な文字としての面白さを踏襲しつつ、1クールや2クールアニメにするのは非常に難しいと思う。
 
それこそ『友崎くん』とかかなり売れた原作でアニメの出来がアレであるし、最近は声優の名前で釣るようなものも多い。
まぁいもウザは声優の名前で露骨に釣るような事はしなかったし、ドラマCDを聴く上では割といいメンツを今の所揃えている(鈴代紗弓は基本は良いとしても彩羽の設定がヤバいので頑張れ~ってカンジダが)ので、このまま他も揃えて欲しい所。
 
アニメの方も注視していかなければなあと思いつつ。
 
次は8月らしい。またその時にはアニメの話も進んでいるだろう。
まぁその前にアニメの話が更新された時点で記事書いてそうな気もするけど。
 
修学旅行巻、楽しみにしたいところだ。
以上。